日本人の女性宇宙飛行士は、宇宙で生理になったらどうするのでしょうか。「無重力だと経血が外に出ないのでは?」「生理用品は使える?」「宇宙飛行中はピルで生理を止めるの?」と疑問に思う人も多いでしょう。
結論からいうと、女性宇宙飛行士は宇宙でも月経を迎えることができ、生理を自然に迎えるか、ホルモン剤などを利用して月経を抑えるかは個人の選択になります。実際、日本人女性宇宙飛行士の山崎直子さんも、生理用品を宇宙へ持って行くことができ、月経をずらすかどうかは本人が選べると説明しています。
この記事では、向井千秋さん、山崎直子さん、米田あゆさんという日本人女性宇宙飛行士について整理しながら、無重力での経血、生理用品、宇宙のトイレ、ピルによる月経管理までわかりやすく紹介します。
日本人女性宇宙飛行士は宇宙で生理をどうする?基本的には本人が選べる

宇宙飛行士だからといって、生理が自動的に止まるわけではありません。宇宙でも自然な月経を迎えることは可能であり、生理用品を使って過ごすこともできます。一方、長期間の宇宙滞在では生活上の負担を減らす目的などから、ホルモン剤を利用して月経を抑える選択もあります。
宇宙でも生理になることはできる
無重力になると人間の体にはさまざまな変化が起こりますが、「重力がないから経血が排出できず、生理そのものができない」というわけではありません。
カナダ宇宙庁も、女性宇宙飛行士は地上と同じように宇宙で生理になることができ、これまでの宇宙飛行で微小重力に関連した明らかな月経上の問題は確認されていないと説明しています。
NASAが2026年に公開している有人宇宙船の居住性に関する基準でも、女性クルーに月経が起こる可能性を前提として、経血を適切に処理・廃棄できる設備を確保するよう求めています。
ピルで生理をずらすかどうかも本人が選択する
2022年に掲載されたJAXA宇宙飛行士候補者募集イベントの記事では、山崎直子さんが女性宇宙飛行士の生理について、任務中にピルで予定をずらす方法と、自然に生理を迎える方法があり、個人の選択に任されている趣旨の説明をしています。
つまり「女性宇宙飛行士は全員、生理を止めて宇宙へ行く」という理解は正確ではありません。ミッションの期間、本人の体質、使用している薬、本人の希望などを踏まえて管理方法を決めることになります。
宇宙で月経を迎えることも、医学的に月経を抑えることも可能です。「宇宙では必ず生理を止める」という決まりがあるわけではありません。
日本人宇宙飛行士個人の服薬状況までは公表されていない
気になるのは、「向井千秋さんや山崎直子さん自身は宇宙で生理になったのか」「実際にピルを飲んでいたのか」という点かもしれません。
しかし、宇宙飛行士の月経周期や具体的な服薬状況は個人の医療情報です。公表されている資料だけから、特定の日本人宇宙飛行士がどのミッションで月経を迎えたのか、どの薬を使用したのかまで断定することはできません。
山崎さんが公の場で説明しているのは、あくまで女性宇宙飛行士が選択できる一般的な月経管理方法です。本人の実際の月経状況とは区別して考える必要があります。
宇宙へ行った日本人女性は向井千秋さんと山崎直子さん

日本人女性宇宙飛行士として名前がよく挙がるのが向井千秋さんと山崎直子さんです。2026年9月現在は米田あゆさんもJAXA宇宙飛行士として活動していますが、これまでに実際に宇宙飛行を経験した日本人女性は向井さんと山崎さんの2人です。
| 宇宙飛行士 | 主な経歴 | 宇宙飛行 |
|---|---|---|
| 向井千秋さん | 医師。1985年に宇宙飛行士として選定 | 1994年、1998年 |
| 山崎直子さん | 1999年に宇宙飛行士候補者として選抜 | 2010年 |
| 米田あゆさん | 医師。2024年10月にJAXA宇宙飛行士として認定 | 2026年9月時点では未飛行 |
向井千秋さんはアジア初の女性宇宙飛行士
向井千秋さんは医師として勤務した後、1985年に宇宙飛行士として選定されました。1994年7月にはスペースシャトル「コロンビア号」のSTS-65ミッションに搭乗し、アジア人初の女性宇宙飛行士となりました。
さらに1998年にはSTS-95ミッションに参加し、2度目の宇宙飛行を経験しています。宇宙ではライフサイエンスや宇宙医学に関連する実験にも携わりました。
向井さんは医学の専門家でもあり、その後も宇宙医学研究に関わっています。ただし、本人の宇宙滞在中の月経について具体的な状況が広く公表されているわけではありません。
経歴はJAXAの向井千秋宇宙飛行士紹介ページで確認できます。
山崎直子さんは日本人女性として2人目に宇宙へ
山崎直子さんは1999年に宇宙飛行士候補者として選抜され、2001年に宇宙飛行士として認定されました。2010年4月、スペースシャトル「ディスカバリー号」のSTS-131ミッションに参加しています。
物資移送作業の取りまとめやISSのロボットアーム操作などを担当し、当時ISSに長期滞在していた野口聡一さんと、日本人宇宙飛行士として初めて軌道上で同時滞在しました。
女性宇宙飛行士の生理についても公の場で説明しており、サニタリー用品を宇宙へ持って行けることや、月経をピルでずらすか自然に迎えるかを本人が選べることを紹介しています。
山崎さんの宇宙飛行についてはJAXAの山崎直子宇宙飛行士紹介ページ、生理に関する発言はJAXA宇宙飛行士候補者募集イベントを紹介したHanako Webの記事で確認できます。
米田あゆさんは2024年に宇宙飛行士として認定
日本人女性宇宙飛行士として今後注目されるのが米田あゆさんです。米田さんは東京大学医学部を卒業した医師で、2023年にJAXA宇宙飛行士候補者として基礎訓練を開始しました。
すべての基礎訓練項目を修了し、2024年10月21日付で諏訪理さんとともに正式なJAXA宇宙飛行士として認定されています。
2026年9月時点では宇宙飛行の経験はなく、将来のミッションへのアサインメントに向けて訓練中です。そのため、「日本人女性で宇宙へ行った人数」を数える場合は向井さんと山崎さんの2人、「現在までに誕生した日本人女性のJAXA宇宙飛行士」という意味では米田さんも含めて考える必要があります。
無重力で生理の血はどうなる?経血が体内に逆流する説を整理

宇宙での生理について最も想像しにくいのが、「無重力なのに経血は外へ出てくるのか」という点です。過去には経血が体内へ逆流するのではないかという懸念もありましたが、実際の宇宙飛行経験から、それが女性の宇宙飛行を妨げるような問題として確認されたわけではありません。
生理は重力だけで血を下へ流しているわけではない
地上では経血が下方向へ流れるため、重力だけで排出されているように感じるかもしれません。しかし、月経は子宮内膜が剥がれて排出される生理現象であり、単に血液が重力によって落下しているだけではありません。
そのため、無重力環境になった瞬間に経血を排出できなくなるわけではありません。実際に多くの女性が宇宙へ行き、自然な月経を経験することが可能であることがわかっています。
初期には「逆行性月経」が心配されていた
宇宙飛行の初期には、微小重力によって月経血が通常よりも卵管方向へ流れ、「逆行性月経」が増えるのではないかという懸念がありました。逆行性月経とは、月経血の一部が卵管を通って腹腔側へ流れる現象です。
しかし、過去の女性宇宙飛行士について、微小重力が原因と考えられる腹部症状や月経血の著しい減少などは確認されていません。カナダ宇宙庁も、宇宙飛行で懸念されていた逆行性月経は実際には観察されていないと説明しています。
自然な月経を長期間追跡した研究はまだ十分ではない
ただし、「宇宙の生理についてすべて解明されている」と考えるのも適切ではありません。自然な月経周期を維持した女性宇宙飛行士を対象とするデータは限られています。
理由の一つは、長期滞在を行う女性宇宙飛行士の中に、ホルモン剤を継続使用して月経を抑える人がいることです。その場合、自然な月経周期が微小重力から受ける影響を調べるデータにはなりません。
2024年に学術誌「npj Microgravity」に掲載された生殖健康に関するシステマティックレビューでも、宇宙飛行が人間の生殖機能へ及ぼす影響について、まだ研究の余地が大きいことが示されています。
宇宙で生理用品やトイレはどう使う?無重力ならではの工夫

宇宙でもナプキンやタンポンなどのサニタリー用品を使用できます。ただしISSは水や収納スペースが限られ、ゴミも簡単に捨てられません。そのため、地上と同じ生理現象でも生活上の負担は大きくなります。
サニタリー用品は宇宙へ持って行ける
山崎直子さんは、女性宇宙飛行士がサニタリー用品を宇宙へ持って行けると説明しています。したがって、「宇宙ではナプキンやタンポンを使えない」ということではありません。
一方、宇宙船へ積み込める物資には重量や容積の制限があります。数日程度なら大きな問題になりにくいものの、数か月、さらに将来の月・火星探査のように長期間になるほど、生理用品の量や使用後のゴミも考える必要があります。
これは医学的に生理ができるかどうかとは別の問題です。宇宙で月経を抑える選択肢が検討される大きな理由は、生理そのものの危険性より、衛生管理や物資・廃棄物管理の負担にあります。
宇宙のトイレは空気で吸い込む
無重力では、地上のように排泄物が便器の下へ自然に落ちていきません。そこで宇宙のトイレではファンによって空気の流れを作り、尿や便を吸引して回収します。
NASAによると、ISSなどで使われるトイレには尿を回収するためのホースと漏斗状の器具があります。NASAが紹介するISSでの日常生活では、宇宙飛行士それぞれが個人用の尿漏斗を使用すると説明されています。
近年のUniversal Waste Management System(UWMS)では、女性宇宙飛行士からの意見も設計に反映され、尿を吸い込む漏斗と便座を同時に使いやすい形へ改良されています。宇宙開発が男性中心だった時代から、さまざまな体格や性別を前提とする設備へ変化していることがわかります。
ISSではシャワーを浴びることができない
ISSでは地上の浴室のようにシャワーを浴びることはできません。無重力では水滴が飛び散るうえ、水自体が貴重な資源だからです。体を清潔にするときは、濡らしたタオルなどを利用します。
生理中も大量の水を自由に使って洗える環境ではありません。そのため、交換した生理用品の処理や身体の清潔保持は、地上より手間がかかると考えられます。
なぜ女性宇宙飛行士はピルで生理を止めることがあるのか

宇宙飛行士が月経を抑えることがあると聞くと、「生理が宇宙では危険だから」と考えがちです。しかし、現在確認できる情報を見る限り、主な理由はミッション中の利便性や衛生管理、物資削減などです。
長期ミッションでは毎月の生理を避けるメリットがある
半年程度のISS長期滞在なら、その間に複数回の月経が訪れる可能性があります。毎回生理用品を交換し、限られた環境で衛生状態を保ち、使用後の用品を廃棄する必要があります。
一方、短期間のミッションであれば、出発日を考慮してホルモン剤で一時的に周期を調整する方法もあります。ミッションの長さによって現実的な方法が変わる点が重要です。
医学誌「npj Microgravity」に2016年に掲載されたレビューでは、長期宇宙ミッションで低用量の経口避妊薬を継続服用し、月経を抑える方法が利用されてきたと報告されています。
ピルを休薬せず続ける方法がある
一般的な低用量ピルには、一定期間ホルモンを含む錠剤を服用した後、休薬期間などを設けるタイプがあります。その休薬期間に起きる出血は、自然な排卵後に起こる通常の月経とは仕組みが異なり、「消退出血」と呼ばれます。
医師の管理下でホルモン剤を連続使用すると、この出血を減らしたり抑えたりできる場合があります。宇宙飛行でもこうした考え方が利用されてきました。
ただし、ピルには適応できない人もいます。血栓症リスクなどを含め、使用できるかどうかは個々の健康状態によって異なります。宇宙飛行士であっても、単純に「生理が邪魔だから全員飲む」というものではありません。
IUDや皮下インプラントなども研究対象になっている
長期宇宙飛行では、毎日薬を飲み続けることにも負担があります。半年分の錠剤を宇宙へ運べば、その分だけ荷物と廃棄物も増えます。さらに月や火星への探査では、地球から簡単に補給できません。
そこで研究者が注目しているのが、LARC(Long-Acting Reversible Contraception、長時間作用型可逆的避妊法)です。代表例にはホルモンを放出する子宮内システムや皮下インプラントがあります。
一度装着すると長期間作用するため、毎日の服薬が不要になる点は長期宇宙探査と相性がよい可能性があります。一方で、不正出血などの可能性もあり、宇宙飛行士にどの方法が最適かは個人ごとの医学的評価が欠かせません。
女性宇宙飛行士の健康管理は生理だけではない

女性宇宙飛行士について「生理」が注目されやすい一方、宇宙で健康を維持するために管理する項目ははるかに広範です。男性・女性を問わず、微小重力や宇宙放射線などへの対策が必要になります。
無重力では筋肉や骨にも影響が出る
地球では立ったり歩いたりするだけでも、筋肉や骨に重力による負荷がかかっています。ISSではその負荷が大幅に減少するため、長期間滞在すると筋力や骨量が低下しやすくなります。
JAXAでは宇宙飛行士の体力維持を目的として運動プログラムを作成しており、ISS滞在中には継続的なトレーニングが組み込まれています。
ここでJAXAが使用している「生理的対策」という表現は、月経の管理という意味ではなく、こうした微小重力による身体機能の変化への対策を意味します。検索時には混同しやすいポイントです。
健康問題は地上の医師が継続して支える
ISSには通常の病院があるわけではありません。そのため宇宙飛行士の健康管理には、地上のフライトサージャンと呼ばれる航空宇宙医学を担当する医師が関わります。
JAXAによると、ISS滞在中の日本人宇宙飛行士と専任フライトサージャンは定期的にビデオ面談を行い、健康状態を確認します。打ち上げ直後など身体変化が大きな時期には、より頻繁にコミュニケーションを取ります。
月経や婦人科系の問題も健康情報の一部です。必要があれば医学的な支援を受ける仕組みがあり、宇宙飛行士が一人で対処することを前提としているわけではありません。
月や火星へ行く時代には月経研究の重要性がさらに高まる
ISSなら緊急時に地球へ帰還する選択肢がありますが、将来の月面長期滞在や火星探査では状況が変わります。火星では地球との移動だけでも長期間を要し、補給できる物資にも大きな制限があります。
そのため、生理用品を何か月・何年分運ぶのか、月経を抑える場合にどの方法が長期使用に適しているのか、ホルモン剤が宇宙放射線や長期保存からどのような影響を受けるのかなど、より細かな検討が必要になります。
女性が宇宙へ行けるかどうかを問題にする段階ではなく、男女を含む多様な宇宙飛行士が長期間安全に暮らせるよう、設備や医療をどう設計するかが重要な課題になっているといえるでしょう。
日本人女性宇宙飛行士と生理についてのまとめ
女性宇宙飛行士は宇宙でも生理を迎えることができます。無重力だから経血を排出できないというわけではなく、かつて懸念された経血の大規模な逆流も、これまでの有人宇宙飛行で問題として確認されたわけではありません。
宇宙飛行中に自然な月経を迎えるか、ピルなどを利用して月経を抑えるかは、基本的に本人の選択と医学的判断によって決められます。ナプキンなどのサニタリー用品も宇宙へ持って行くことが可能です。
日本人女性では、向井千秋さんが1994年と1998年、山崎直子さんが2010年に宇宙飛行を経験しています。2024年には医師の米田あゆさんもJAXA宇宙飛行士として正式に認定され、2026年9月時点では将来のミッションへのアサインメントに向けて訓練しています。
なお、向井さんや山崎さん個人が実際に宇宙で生理を迎えたか、どの薬を使用したかといった具体的な医療情報は、公表情報から断定できません。「日本人女性宇宙飛行士は全員ピルで生理を止めていた」と決めつけず、宇宙では複数の月経管理方法から選べると理解するのが適切です。



