月面で4G・5G通信は使える?2025年の実証結果とスマホがそのまま使えない理由

月面で4G・5G通信は使える?2025年の実証結果とスマホがそのまま使えない理由
月面で4G・5G通信は使える?2025年の実証結果とスマホがそのまま使えない理由
月探査と月面開発

月面で4Gや5G通信は使えるのでしょうか。地球でスマートフォンを使うのと同じように、月でも通話やインターネットができるのか気になる人もいるでしょう。

結論からいうと、4G/LTEは月面で実際に基地局システムが稼働するところまで確認されていますが、一般利用できる4Gサービスが月に存在するわけではありません。5GについてもNASAなどが研究を進めている段階で、2026年9月時点で月面に常設の5Gネットワークが提供されている状況ではありません。

この記事では、2025年に月へ運ばれたNokiaの4G設備がどこまで成功したのか、普通のスマホは使えるのか、なぜ最初に5Gではなく4Gが選ばれたのか、そして将来の月面通信がどのような形になると考えられているのかをわかりやすく説明します。

  1. 月面で4G・5G通信は使える?現在の結論
    1. 4G/LTEは月面で実際に電波を出すところまで成功している
    2. ただし月面初の4G通話までは成功していない
    3. 5Gは研究されているが月面サービスはまだない
  2. 2025年の月面4G実証では何が行われたのか
    1. 基地局を丸ごと小型化した「Network in a Box」
    2. ローバーやホッパーを4Gでつなぐ計画だった
    3. 失敗というより「部分的な実証成功」と考えるのが適切
  3. なぜ月面通信は5Gではなく4Gから始まったのか
    1. 4Gは成熟した技術で実績が多い
    2. 月面探査では4Gでも十分に役立つ用途が多い
    3. 将来的には5Gへ発展する可能性が高い
  4. 月面で普通のスマホを持っていけば通話やネットはできる?
    1. ドコモ・au・ソフトバンクなどの電波が月まで届くわけではない
    2. 市販スマホは月面環境そのものに対応していない
    3. 将来も「携帯キャリアのローミング」とは違う可能性が高い
  5. 月面4G・5Gでできることと地球との通信の違い
    1. 宇宙飛行士・ローバー・基地設備をまとめて接続できる
    2. 月面4Gと「月から地球への通信」は別の区間と考える
    3. 5Gになっても地球との通信遅延はなくならない
  6. 月面で4G・5Gを安定して使うための課題
    1. 最大の問題の一つが電力と温度管理
    2. クレーターや地形によって電波が遮られる
    3. 基地局を増やすには輸送コストと保守の問題がある
  7. 今後は月面5Gや「月のインターネット」が実現する?
    1. NASAは月面の4G・5G性能を研究している
    2. LunaNetは4G・5Gより大きな「月の通信網」の構想
    3. 将来は「基地局を毎回持っていく」必要がなくなる可能性もある
  8. 月面で4G・5G通信は使えるが、一般向けサービスはまだこれから

月面で4G・5G通信は使える?現在の結論

「月面で4Gや5Gは使えるのか」という質問には、技術的に利用できるかという意味と、私たちが携帯電話サービスとして利用できるかという意味があります。この2つを分けて考えることが重要です。

4G/LTEは月面で実際に電波を出すところまで成功している

4Gについては、すでに単なる構想ではありません。2025年3月、Nokia Bell Labsが開発した月面通信システム「Lunar Surface Communications System(LSCS)」が、Intuitive Machinesの月着陸船Athenaに搭載されて月面へ到達しました。

Nokiaの公式発表によると、基地局、無線装置、コアネットワークなどを一体化した「Network in a Box」は月面で電源が入り、正常な「on-air」の状態になりました。約25分間の電力供給中にはサービス中断もなく、運用データを地球側へ送ることにも成功しています。

NASAも2026年に公開している月面技術情報の中で、Nokiaの4G/LTEシステムについて、2025年に月へ着陸して電源投入と運用データの送信に成功し、ネットワークの重要な動作を検証したと説明しています。

4G通信の技術そのものが「月では使えない」という状況ではありません。2025年の実証によって、宇宙用に設計した4G/LTE設備が月面環境で立ち上がり、正常に動作できることが確認されています。

ただし月面初の4G通話までは成功していない

注意したいのは、「月面で4Gネットワークが動いた」ことと、「月面にある端末同士が4G通信に成功した」ことは同じではない点です。

当初はAthena着陸船に設置した基地局と、Micro Nova Hopperや月面ローバーなどに搭載した通信端末を4Gで接続し、月面初のセルラー通信を実証する予定でした。しかしAthenaが着陸後に想定した姿勢にならず、太陽電池による電力供給が大きく制限されました。

Nokiaによると、基地局システムを起動できたのは約25分間です。さらに基地局が起動した時点ではMicro Nova Hopper側の通信モジュールが極端な低温によって動作範囲を下回っており、端末と基地局の接続は成立しませんでした。

「月面で4G通話に成功した」「月面でスマホ通信が実現した」と理解するのは正確ではありません。成功したのは基地局システムの起動や運用データ送信などであり、予定されていた端末との4G接続までは実現していません。

5Gは研究されているが月面サービスはまだない

5Gについては4Gよりさらに先の段階です。NASAのGlenn Research Centerでは「LunarLiTES」という研究を通じ、地球向けに開発された4G・5G技術が月面でどのような性能を示すか検証しています。

実際の無線機器を使いながら月面の電波環境を再現し、通信性能やネットワーク構成を評価する取り組みです。将来の月面インフラとして5Gが使われる可能性は十分にありますが、2026年9月時点で「月面の5G基地局へ端末を接続してサービスを利用できる」という段階には達していません。

項目 4G/LTE 5G
月面での状況 2025年に基地局システムが稼働 研究・評価が進められている段階
月面端末との接続 2025年実証では未達成 常設サービスなし
一般のスマホ利用 できない できない
今後の可能性 探査・宇宙服・ローバー通信など 将来の大容量月面ネットワーク候補

2025年の月面4G実証では何が行われたのか

月面4Gの話を理解するうえで重要なのが、NokiaとIntuitive MachinesによるIM-2ミッションです。「月に携帯基地局を置く」というニュースだけを見ると地球と同じ携帯電話網を想像しやすいのですが、実際には探査機同士をつなぐ小規模なプライベートネットワークでした。

基地局を丸ごと小型化した「Network in a Box」

Nokia Bell Labsが開発したLSCSでは、基地局、無線設備、ネットワークの中核となるコア機能などをコンパクトな装置にまとめています。地球の携帯電話基地局設備をそのまま月へ持っていったわけではありません。

ロケット打ち上げ時の振動、宇宙空間の放射線、真空、月面の厳しい温度環境に耐えられるように設計し直す必要があります。一方、通信方式の基礎には地球で広く普及しているLTE技術が使われています。

NASAは2020年、Tipping Pointプログラムの一つとしてNokia of Americaに1,410万ドルを割り当て、宇宙向けLTE/4G通信システムの開発を支援しました。まったく新しい月専用通信方式を一から作るのではなく、地球で成熟した技術を宇宙へ応用する考え方です。

ローバーやホッパーを4Gでつなぐ計画だった

実証では、Athena着陸船をネットワークの中心として、Lunar Outpostの月面ローバーやIntuitive MachinesのMicro Nova Hopperを接続する計画でした。

用途は音声通話だけではありません。探査機への指示、位置や機器状態を示すテレメトリーデータ、高精細映像など、月面活動で発生するさまざまな情報を一つのネットワークで運ぶことが想定されていました。

これは携帯電話技術を月へ持ち込む大きな理由でもあります。従来の宇宙探査では機器ごとに専用無線システムを用意するケースがありますが、共通規格である4Gや5Gを利用できれば、複数のローバー、宇宙飛行士、センサー、基地設備を同じ仕組みで接続しやすくなります。

失敗というより「部分的な実証成功」と考えるのが適切

IM-2では予定していた端末間通信まで到達できなかったため、完全成功とはいえません。しかし基地局が月面で正常に起動し、基地局・無線・コアネットワークなどの構成要素が機能したことには大きな意味があります。

特に興味深いのは、通信技術そのものではなく電力と温度が実証を妨げたことです。月面通信を実用化するには、「電波が届くか」だけでは足りません。基地局と端末の双方へ安定して電力を供給し、電子機器を適切な温度範囲に保つ必要があります。

2025年の結果から見えてくる重要なポイントは、月面4Gの課題が通信規格だけではなく、着陸精度、電源、熱制御、基地局配置、端末の耐環境性能まで含む総合的なインフラ問題だということです。

なぜ月面通信は5Gではなく4Gから始まったのか

地球ではすでに5Gが普及しているため、「わざわざ月に4Gを持っていく必要があるのか」と疑問に思うかもしれません。しかし宇宙開発では、新しいことよりも十分に検証されたことが重要になる場面があります。

4Gは成熟した技術で実績が多い

4G/LTEには長期間にわたって世界中で使われてきた実績があります。通信チップ、基地局技術、アンテナ、ネットワーク制御、セキュリティー、端末接続などの技術が成熟しており、動作に関する膨大な知見も蓄積されています。

月へ機器を送るには重量や消費電力に厳しい制限があります。しかも故障しても現地へ修理に行くことは簡単ではありません。そのため最初の技術実証では、5Gの最高速度を追求するより、成熟していて扱いやすい4Gを選ぶことに合理性があります。

Nokiaの月面ネットワーク開発がNASAの支援対象に選ばれたのは2020年です。当時すでにLTEは十分に成熟していた一方、5Gはまだ世界各地で導入が始まった時期でした。

月面探査では4Gでも十分に役立つ用途が多い

月面ローバーから送られるセンサーデータ、音声、位置情報、機器の状態、映像などは、必ずしも超高速な5Gでなければ扱えないものではありません。4Gでも複数の用途を統合したブロードバンド通信を構築できます。

地球では5Gの速度が注目されやすいものの、月面探査では通信速度だけで優劣を判断できません。消費電力、カバーできる距離、装置の重量、信頼性、アンテナ配置などを含めて最適な方式を選ぶ必要があります。

宇宙では「最新世代だから優れている」とは限りません。必要な性能を満たしながら、軽く、省電力で、故障しにくく、十分な検証実績があることも非常に重要です。

将来的には5Gへ発展する可能性が高い

だからといって、月では4Gだけが使われ続けるという意味ではありません。NASAは4Gだけでなく5Gの月面利用についても研究しています。

人が長期間滞在する月面基地ができれば、接続する機器の数は増えていきます。複数の宇宙飛行士、無人ローバー、建設機械、観測装置、カメラ、各種センサーなどが同時に通信する環境では、より大容量で柔軟なネットワークが求められるでしょう。

その段階では5G、さらに将来的には6Gなど、その時点で成熟した通信技術が導入される可能性があります。NASAの技術資料でも、4Gと5Gを月面通信へ適用する研究だけでなく、将来の6Gが月探査にどのような利点をもたらすかという検討が示されています。

月面で普通のスマホを持っていけば通話やネットはできる?

月面4Gという言葉から最も誤解されやすいのが、「月へスマートフォンを持っていけばアンテナ表示が立つのではないか」という点です。現在はそのような使い方はできません。

ドコモ・au・ソフトバンクなどの電波が月まで届くわけではない

月面の4Gは、地球の携帯電話基地局から約38万km先まで電波を飛ばす仕組みではありません。月面側に小型基地局を設置し、その近くにいる探査機や宇宙飛行士用端末を接続する仕組みです。

つまり、地球の通信会社が提供している通常の4Gや5Gエリアが月まで広がるわけではありません。地球から月まで直接スマートフォンの電波を届けることを目指しているわけでもありません。

「月面4G」とは、月面に独立した携帯電話方式のネットワークを作ることだと考えると理解しやすいでしょう。

市販スマホは月面環境そのものに対応していない

仮に月面に4G基地局があって周波数などの通信条件が合ったとしても、一般的なスマートフォンをそのまま屋外の月面へ持ち出して使用できるとは考えられません。

月面はほぼ真空で、大気によって温度が穏やかに保たれる環境ではありません。NASAによれば、場所や時間によって極端な高温・低温が発生し、永久影となる場所では特に厳しい低温環境になります。放射線や細かな月の砂であるレゴリスへの対策も必要です。

スマートフォンのバッテリー、ディスプレイ、半導体、接着剤などは一般的な地球環境を前提に設計されています。そのため月面通信では、市販スマホそのものより、宇宙服やローバーに組み込まれた宇宙環境対応の通信端末が現実的です。

将来も「携帯キャリアのローミング」とは違う可能性が高い

月面基地が本格化したとしても、最初から旅行者がスマートフォンを取り出し、普段契約しているSIMで自動的にローミングできるとは限りません。

初期のネットワークは、NASAや民間企業が運用するプライベート4G・5Gとして構築される可能性が高いと考えられます。接続する機器も登録された宇宙服、ローバー、基地設備、センサーなどが中心になるでしょう。

通信技術としては地球の携帯電話と共通点があっても、利用サービスとしては一般消費者向け携帯回線より、工場や鉱山などで使われる「ローカル5G」やプライベートLTEに近いイメージです。

月面4G・5Gでできることと地球との通信の違い

月面に4Gや5Gを整備する最大の目的は、スマートフォンを便利に使うことではありません。宇宙飛行士や探査機、基地設備を効率よく接続する通信インフラとして活用することにあります。

宇宙飛行士・ローバー・基地設備をまとめて接続できる

月面のセルラーネットワークでは、宇宙飛行士同士の音声通信、宇宙服の生命維持装置などから得られるテレメトリーデータ、ローバーの遠隔操作、科学観測データ、カメラ映像などをまとめて扱えるようになることが期待されています。

NokiaとAxiom Spaceは2024年、次世代月面宇宙服AxEMUへ4G/LTE通信機能を組み込む計画を発表しました。宇宙服から音声、テレメトリー、HD映像などを送信する構想です。

ただし発表当時はArtemis IIIでの月面利用が想定されていましたが、NASAは2026年にArtemis計画を変更しました。現在の計画ではArtemis IIIは2027年の地球低軌道での実証ミッションとなり、有人月面着陸はArtemis IVで2028年に予定されています。そのため、古い記事にある「Artemis IIIで月面4G宇宙服を使用」というスケジュールは現在の計画とは異なります。

月面4Gと「月から地球への通信」は別の区間と考える

ここは月面通信を理解するときに特に重要です。4Gや5Gは主に、月面にいる宇宙飛行士やローバーと近くの基地局をつなぐ「現地ネットワーク」として使われます。

そこから地球までの約38万kmを4Gの基地局が直接カバーする必要はありません。集めたデータは着陸船などから地球へ直接送ったり、将来は月周回衛星を中継して地球へ届けたりできます。

通信区間 想定される役割
宇宙服・ローバー → 月面基地局 4G・5Gなどの近距離セルラー通信
月面基地局 → 月周回衛星 長距離の宇宙通信
月周回衛星 → 地球 無線・光通信などによるバックホール

地球に置き換えれば、スマートフォンから基地局までの無線通信と、基地局からインターネットへつながる基幹回線を分けて考えるのに似ています。月でも、4Gや5Gだけですべての通信区間を担当する必要はありません。

5Gになっても地球との通信遅延はなくならない

5Gには低遅延という特徴がありますが、月面で5Gを使えば地球との会話が地上と同じほど瞬時になるわけではありません。

電波は光とほぼ同じ速度で進みますが、地球と月の距離が非常に長いため、NASAは月までの片道の光伝搬時間を約1.3秒としています。往復するだけでも理論上は約2.6秒必要で、実際には機器処理や中継などの時間も加わります。

「5Gは低遅延なのに、なぜ月との通話には遅れが出るの?」という疑問があります。5Gが短縮できるのは主にネットワーク内部の処理や無線区間の遅延です。約38万kmという物理的な距離によって発生する伝搬時間までなくすことはできません。

月面で4G・5Gを安定して使うための課題

地球では当たり前に利用できる携帯電話ネットワークも、月面では基地局を置くだけで完成するわけではありません。2025年の実証は、むしろ通信設備を取り巻くインフラの重要性を示しました。

最大の問題の一つが電力と温度管理

IM-2では、基地局装置そのものは正常に動作しました。それでも通信端末との接続ができなかった原因には、着陸船の姿勢による電力不足と、通信モジュールの低温化がありました。

これは将来の月面基地でも重要な問題です。基地局は通信が必要な時間に安定して電力を受け取らなければなりません。ローバーや宇宙服の通信機器にも同じことがいえます。

特に月の南極付近には永久に太陽光が届かないクレーターがあり、水氷の探査対象として重要である一方、非常に低温になる場所があります。通信カバー範囲だけでなく、電源と熱設計を一体で考える必要があります。

クレーターや地形によって電波が遮られる

月には地球のような建物や樹木はほとんどありませんが、だからといってどこへでも簡単に電波が届くわけではありません。月面には大小のクレーターや丘、斜面があります。

セルラー通信では基地局と端末の位置関係が重要です。ローバーがクレーター内部へ入ったり、尾根の反対側へ移動したりすると、見通しが失われて通信条件が悪化する可能性があります。

基地局を高い位置へ置く、複数の基地局を配置する、ローバーや中継装置を利用する、月周回衛星と組み合わせるなど、地形を前提としたネットワーク設計が必要になります。

基地局を増やすには輸送コストと保守の問題がある

地球では通信需要が多い地域に基地局を追加できますが、月では基地局一つを運ぶにもロケットによる輸送が必要です。装置の重量や大きさはミッション全体のコストに影響します。

故障したときの保守も容易ではありません。そのため月面基地局には、できるだけ小型・軽量・省電力でありながら、広い範囲を安定してカバーすることが求められます。

この観点では、単純に通信速度だけを高めるよりも、「少ない設備で必要なエリアをどれだけ確実につなげるか」のほうが初期の月面開発では重要になると考えられます。

今後は月面5Gや「月のインターネット」が実現する?

4Gの技術実証は始まったばかりですが、NASAが描いている将来像は一つの基地局だけではありません。多数の月面設備や周回衛星を組み合わせ、地球の通信網に近いネットワークへ発展させる構想があります。

NASAは月面の4G・5G性能を研究している

NASA Glenn Research CenterのLunarLiTESでは、4Gと5Gを月環境へ適用した場合の通信性能を調査しています。将来、月面活動が拡大すれば、大容量通信、多数端末の接続、ローバーなどの移動体通信がより重要になります。

5Gを導入する意味は、単に動画を速くダウンロードできることではありません。宇宙飛行士、探査ロボット、建設機械、科学機器などを共通ネットワークで接続し、基地全体の情報を効率的に扱えることにあります。

月面活動が小規模な段階では4Gで十分でも、接続台数や通信量が増加すれば5Gの利点が大きくなる可能性があります。つまり4Gと5Gは競合するというより、月面インフラの成長に合わせて段階的に進化していくものと考えたほうが自然です。

LunaNetは4G・5Gより大きな「月の通信網」の構想

NASAは「LunaNet」という月周辺の通信・航法ネットワーク構想も進めています。LunaNetは特定の4Gや5G基地局の商品名ではなく、政府機関や民間企業など複数のサービス提供者が相互接続できるようにするための標準やネットワークの考え方です。

通信だけでなく、月面や月周回空間での位置・航法・時刻情報などを提供することも想定されています。NASA、ESA、JAXAもLunaNetの相互運用仕様の策定に関わっています。

NASAが2026年に公開しているMoon Base Systemsの計画では、初期段階で月周回通信・航法衛星を配置し、その後に月面通信インフラを拡大し、最終的には広い地域をカバーする協調ネットワークへ成長させる構想が示されています。

将来は「基地局を毎回持っていく」必要がなくなる可能性もある

現在の月探査では、それぞれのミッションが通信機器を持参する必要があります。しかし恒久的な月面通信インフラが整備されれば、新しいローバーや宇宙服は既存ネットワークへ接続するだけで通信できる形へ変わる可能性があります。

これは地球のスマートフォンと似ています。利用者自身が基地局を持ち歩かなくても、通信会社が整備したネットワークに端末を接続できます。月でも利用者が増えれば、通信インフラそのものをサービスとして提供するビジネスが生まれる可能性があります。

ただし、月全体がすぐ4Gや5Gのエリアになるわけではありません。初期には有人基地周辺、着陸地点、資源探査エリアなど通信需要が集中する場所から整備されると考えるのが現実的です。

将来の月面通信は「4Gか5Gか」だけで考えるより、月面の4G・5G、月周回衛星、地球との長距離無線・光通信、LunaNetなどを組み合わせた多層ネットワークとして考えると理解しやすくなります。

月面で4G・5G通信は使えるが、一般向けサービスはまだこれから

まとめ
まとめ

月面で4Gや5Gの通信技術を使うこと自体は現実的になっています。特に4G/LTEでは、2025年にNokiaのLSCSが月面へ到達し、基地局システムの電源投入、正常なon-air状態、運用データの地球への送信などに成功しました。

一方、電力不足や低温の影響によってローバーなどの端末との4G接続までは実現していません。したがって現在の状況は、「月で4Gが完全に実用化された」というより、月面でもセルラー技術を使える可能性が実機によって確認された段階と考えるのが適切です。

5GもNASAが月面利用を研究していますが、2026年9月時点では常設の月面5Gサービスはありません。日本で使っているスマートフォンを月へ持っていき、そのままドコモやau、ソフトバンクなどの回線へ接続することもできません。

将来の月面基地では、4G・5Gが宇宙服、ローバー、センサー、建設機械などをつなぎ、その先を月周回衛星やLunaNetが地球へつなぐ形になる可能性があります。2025年の4G実証は、月でも携帯電話技術が重要な社会インフラになる可能性を示した最初の一歩といえるでしょう。

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