ロケットは、あんなに大きくて重いのに、なぜ空高く飛んで宇宙まで行けるのでしょうか。「火が地面を押しているから?」「空気をけって進んでいるの?」と不思議に思う小学生も多いでしょう。
ロケットが飛ぶいちばん大切な仕組みは、実はふくらませた風船が飛んでいく仕組みとよく似ています。この記事では、ロケットがなぜ飛ぶのかを小学生にもわかる言葉で説明し、空気のない宇宙でも進める理由や飛行機との違い、家で確かめられる簡単な実験まで紹介します。
ロケットはなぜ飛ぶ?小学生向けに一言でいうと「ガスを出した反動」

ロケットが飛ぶ理由をできるだけ簡単にいうと、ロケットの後ろからガスをものすごい勢いで出し、その反動で反対方向へ進んでいるからです。上へ打ち上がるときにはガスを下向きに出し、ロケット本体は上向きに進みます。
ふくらませた風船と同じような仕組み
風船に空気をいっぱい入れ、口をしばらずに手を離してみると、風船は空気を吹き出しながら飛んでいきます。人が風船を前へ投げているわけではありません。それでも飛ぶのは、中の空気が一方向へ勢いよく出ていくためです。
たとえば、風船の口から空気が右へ吹き出せば、風船はおおよそ左へ動きます。空気を外へ押し出したとき、その反対向きに風船も押されるからです。
JAXAも子ども向けの解説で、ロケットが飛ぶ原理を風船にたとえています。ロケットでは空気の代わりに、エンジンでつくられた高温・高圧のガスを後ろへ高速で吹き出しています。
「作用・反作用」という力が関係している
この仕組みは「作用・反作用」と呼ばれる考え方で説明できます。ニュートンの運動の法則の一つで、ある物体が別の物体を押すと、押された物体も反対向きに押し返す力を及ぼすというものです。
ロケットの場合、ロケットが燃焼ガスを後ろへ押し出します。するとガスからロケットにも反対方向の力がはたらきます。その結果、ロケットはガスを出した向きとは逆へ加速します。
少し難しい言葉では、このロケットを前へ進ませる力を「推力(すいりょく)」といいます。JAXA宇宙科学研究所の子ども向け解説でも、ガスを高速で噴射した反動でロケットが進むことが説明されています。
火が地面を押して飛んでいるわけではない
打ち上げの映像では、ロケットの下から大きな炎が出ています。そのため「炎が地面を押して、その力で飛び上がる」と考えたくなるかもしれません。しかし、これは正確ではありません。
ロケットを進ませているのは、地面を押す力ではなく、ロケット自身がガスを高速で噴射することで生まれる推力です。そのため、発射台から遠く離れたあともエンジンが動いている間は加速できます。
ロケットは「地面をける乗り物」ではありません。自分の持っている物質を後ろへ高速で出すことで、自分自身を反対方向へ進ませる乗り物です。
ロケットのエンジンでは何が起きているの?

本物のロケットでは、風船よりはるかに大きな力をつくらなければなりません。そのため、多くのロケットは推進剤を使って高温・高圧のガスをつくり、エンジンの後ろにある「ノズル」から高速で噴射します。
燃料と酸化剤から大量のガスをつくる
代表的な化学ロケットでは、燃料と「酸化剤(さんかざい)」という物質を使います。酸化剤とは、簡単にいえば燃料を燃やすために必要な酸素などを供給する役目をする物質です。
エンジンの燃焼室で燃料と酸化剤を反応させると、非常に熱く、圧力の高いガスができます。そのガスがエンジンの後ろへ向かって流れ、外へ噴き出していきます。
日本のH3ロケットでは、第1段のLE-9エンジンに液体水素と液体酸素が使われています。液体水素が燃料、液体酸素が酸化剤です。ロケットによって使う推進剤は異なりますが、「高速のガスを後ろへ出して推力を得る」という基本は共通しています。
ラッパのような形の「ノズル」にも意味がある
ロケットのエンジンの下を見ると、出口が広がったラッパのような形をしていることがあります。この部分がノズルです。
燃焼室でできた高温・高圧のガスをノズルから噴射することで、ガスを高速で外へ送り出します。後ろへ出ていくガスの量や速さなどによって、生み出せる推力も変わります。
つまりロケットは、ただ炎を大きくすればよいわけではありません。燃料や酸化剤の種類、エンジン内部の圧力、ノズルの形などを考え、できるだけ効率よくガスを噴射できるように設計されています。
ロケットには液体を使うものと固体を使うものがある
ロケットの推進剤には、大きく分けると液体を使うタイプと固体を使うタイプがあります。液体ロケットでは燃料や酸化剤をタンクに入れ、エンジンへ送り込んで燃焼させます。
固体ロケットでは、燃料となる成分と酸化剤となる成分などを混ぜ合わせて固めた「固体推進剤」を使います。日本のH3ロケットには、必要な打ち上げ能力に応じて「SRB-3」という固体ロケットブースタを取り付ける構成があります。
仕組みや扱い方には違いがありますが、どちらも最終的には物質を後ろへ高速で噴射し、その反作用を利用して前へ進んでいます。
空気がない宇宙でもロケットが飛べるのはなぜ?

「ガスを噴き出すなら、空気を押して進むのでは?」という疑問も出てきます。しかし、ロケットは周りの空気を押して進む乗り物ではありません。だからこそ、ほとんど空気がない宇宙空間でも進むことができます。
ロケットは空気をけって進んでいるわけではない
宇宙には地上のような空気がほとんどありません。それでもロケットが進めるのは、噴射したガスとロケットの間にはたらく作用・反作用を利用しているからです。
イメージしやすい例として、車輪がよく動く台の上に人が立ち、重いボールを前へ投げる場面を考えてみましょう。ボールを前へ投げると、人と台は反対方向へ動きます。周りの空気をけらなくても起こる動きです。
同じように、ロケットがガスを後ろへ送り出せば、ロケットは反対方向へ動きます。NASAも小学生向けの説明で、ロケットが排気を後ろへ押し、排気からロケットが反対方向へ押されるという考え方を紹介しています。
燃やすために必要なものもロケットが運んでいる
宇宙で問題になるのは「進むための空気」ではなく、燃料を燃やすために地球の空気中の酸素を利用できないことです。そこで化学ロケットは、燃料とともに酸化剤も積んで飛びます。
ロケットが宇宙でもエンジンを動かせる大きな理由は、周りの空気に頼らず、推進に必要な物質を自分で持っていくからです。
「宇宙には酸素がないのに、なぜロケットのエンジンは動くの?」という疑問は、酸化剤も一緒に運んでいることを知れば理解しやすくなります。
飛行機は周りの空気を利用する
ロケットと飛行機は、どちらもエンジンを使って進みますが、大きな違いがあります。ジェット機のエンジンは、周囲の空気を取り込み、その中の酸素を利用して燃料を燃やします。
さらに、多くの飛行機は翼のまわりを流れる空気によって揚力を得ています。そのため、空気がほとんどない宇宙空間を普通のジェット機がそのまま飛び続けることはできません。
ロケットは酸化剤を自分で積み、ガスを噴射して推力をつくるため、空気のない場所でもエンジンを使えます。JAXAの解説でも、ジェット機は外の空気を取り込む一方、ロケットは燃料と酸化剤を持っていくという違いが示されています。
| くらべるもの | ロケット | ジェット機 |
|---|---|---|
| 燃料を燃やすための酸素など | 酸化剤を機体に積んでいく | 主に周りの空気から取り込む |
| 空気のない宇宙でエンジンを使えるか | 使える | 通常のジェットエンジンは使えない |
| 進む力 | ガスなどを後ろへ噴射して推力を得る | 取り込んだ空気を利用し、後方へ流して推力を得る |
重いロケットが地球から飛び立てるのはなぜ?

ガスを噴射すれば必ず宇宙へ行けるわけではありません。地球では物を下へ引っ張る重力がはたらいているため、それに負けない十分な推力が必要です。さらに、宇宙へ荷物を運ぶには大きな速度も必要になります。
上向きの推力が十分に大きくなると打ち上がる
地上に置かれたロケットには、地球の重力によって下向きの力がはたらいています。エンジンを動かしても、上へ進ませる推力が小さければロケットは持ち上がりません。
打ち上げでは、ロケットを上へ進ませる推力が重力などに打ち勝てる状態をつくります。するとロケットは発射台を離れ、上空へ向かって加速していきます。
打ち上げ直後に大量の燃料を使い、大きな炎やガスを噴射するのは、巨大で重い機体を持ち上げて加速するために非常に大きな力が必要だからです。
ロケットの多くが途中で分かれるのは軽くするため
ロケットの打ち上げ映像では、飛行中に大きな部品を切り離す場面があります。これは故障して落ちているわけではなく、最初から予定された動きです。
使い終わった段には、空になったタンクやエンジンなどが残っています。それをずっと運べば、その分まで加速しなければなりません。そこで燃焼を終えた段を切り離し、残った機体を軽くしてさらに速度を上げます。
このように何段かに分かれたものを「多段式ロケット」と呼びます。JAXAも、多段式にする理由を、使い終わった機体を切り離して身軽になりながら必要な速度を得るためと説明しています。
宇宙へ行くには「高く上がる」だけでは足りない
人工衛星を地球の周りに回したい場合、単に高い場所まで上がれば完成というわけではありません。人工衛星が地球の周囲を回り続けるためには、横方向にも非常に大きな速度が必要です。
ボールを横向きに投げると、少し進んでから地面へ落ちます。もっと速く投げれば、もっと遠くまで進みます。もし空気の影響をほとんど受けない高い場所で、地球の丸みに沿うほど十分な速さで横へ進めれば、落ち続けても地面にぶつからず地球の周りを回る状態をつくれます。これが軌道を考えるときの基本的なイメージです。
そのため人工衛星を運ぶロケットは、最初から最後まで真上だけを目指すわけではありません。上空へ進みながら進行方向を変え、目的の軌道に必要な高さと速度をつくります。
ロケットについて小学生が疑問に思いやすいこと

ロケットの基本がわかると、「羽がないのになぜ進めるの?」「エンジンを止めたらすぐ落ちるの?」など、新しい疑問も出てきます。特に間違えやすいポイントをまとめておきましょう。
ロケットには飛行機のような大きな翼がなくてもいいの?
飛行機は翼と空気のはたらきを利用して、機体を空中に支える揚力を得ています。一方、ロケットはエンジンが生み出す大きな推力によって上昇・加速できます。そのため、飛行機のような大きな主翼を必ずしも必要としません。
ただし、ロケットなら形は何でもよいというわけではありません。大気中では空気抵抗を受けますし、機体が不安定になれば予定した方向からずれてしまいます。
ロケットの形や姿勢を安定させる仕組み、エンジンの噴射方向などを利用して、目的地へ正確に進めるように設計されています。
宇宙でエンジンを止めると、すぐに止まるの?
地上では自転車のペダルをこぐのをやめると、タイヤや地面との摩擦、空気抵抗などによって少しずつ止まります。そのため「エンジンを止めたらロケットも止まる」と考えやすいかもしれません。
しかし、宇宙では空気抵抗がほとんどありません。物体には、外から力を受けなければそれまでの運動を続けようとする性質があります。そのため、エンジンを止めた瞬間に速度がゼロになるわけではありません。
実際には地球や月、太陽などの重力の影響を受けるので進む向きや速度は変化します。人工衛星の場合は、前へ進もうとする運動と地球の重力による落下が組み合わさり、地球の周囲を回り続けることができます。
ロケットの炎が大きいほど速いの?
炎の見た目だけを比べて「大きな炎だから推力も必ず大きい」と判断することはできません。ロケットの推力には、エンジンからどれほどの量のガスを、どれほどの速さで噴射するかなどが関係します。
ロケットの種類によって使う推進剤やエンジンの仕組みも異なります。見えている炎の色や大きさだけでは、エンジンの性能を正確に比べられません。
大切なのは、「炎に押される」のではなく、物質を後ろへ高速で噴射することで推力が生まれるという点です。
どうしてロケットの先はとがっているの?
ロケットは宇宙へ出るまでに、地球の大気の中を高速で通ります。空気がある場所では、進むロケットに空気抵抗がはたらきます。
先端をなめらかな形にすることは、大気中を飛ぶときの空気の流れを考えるうえで重要です。また、人工衛星などを積むロケットでは、先端部分の「フェアリング」と呼ばれるカバーが、搭載物を風圧や空気との摩擦による加熱などから守ります。
空気のない宇宙だけを見れば空気抵抗を気にする必要はありませんが、地球から打ち上げるロケットは途中まで濃い大気の中を通るため、形にも意味があります。
風船ロケットで「なぜ飛ぶのか」を実験してみよう

ロケットの基本原理は、家庭にある物を使った風船ロケットでも観察できます。火や本物のロケット燃料を使う必要はありません。夏休みの自由研究などで試す場合にも、作用・反作用を目で確認しやすい実験です。
用意するもの
風船、長めのひも、ストロー、セロハンテープを用意します。ひもは部屋の端から端など、周囲にぶつかる物がない場所へまっすぐ張れる長さがあると実験しやすくなります。
| 用意するもの | 役割 |
|---|---|
| 風船 | 中の空気を後ろへ吹き出します |
| ストロー | ひもに沿って風船を進ませます |
| ひも | 進む方向をわかりやすくします |
| セロハンテープ | 風船とストローを固定します |
風船ロケットの実験方法
手順1:まずストローの中にひもを通します。ひもの両端を離れた場所に固定し、たるまないように張ります。
手順2:風船をふくらませます。口は結ばず、空気が逃げないように指でつまんでおきます。ふくらませた風船をセロハンテープでストローに固定します。
手順3:風船の口が進みたい方向とは反対側を向くようにします。手を離すと、風船から空気が噴き出し、ストローと一緒にひもに沿って進みます。
このとき「空気が出た向き」と「風船が進んだ向き」を観察してください。二つが反対向きになっていることが、ロケットの原理を理解する重要なポイントです。
空気の量を変えると自由研究になる
1回飛ばして終わりにせず、風船に入れる空気の量を変えて比べてみると、自由研究として一段深い実験になります。たとえば「少しふくらませた場合」「半分くらい」「できる範囲で大きくふくらませた場合」のように条件を決め、進んだ距離や時間を記録します。
ただし、正しく比べるには、空気の量以外の条件をできるだけ同じにすることが大切です。同じ風船、同じひもの長さ、同じスタート位置で実験すると、結果を比べやすくなります。
「空気をたくさん入れるほど必ず何倍も遠くへ飛ぶ」と最初から決めつけず、予想を書いてから実験し、実際の結果と比べましょう。風船の形や空気の出方、ひもとの摩擦なども結果に影響するため、予想どおりにならないこと自体が大切な発見になります。
自由研究では「なぜ」を自分の言葉でまとめる
実験のまとめには、「風船が飛びました」だけでなく、その理由まで書くと内容が伝わりやすくなります。
たとえば「風船の中の空気が後ろへ吹き出し、その反対方向へ風船が進んだ。本物のロケットも、高温のガスを後ろへ高速で吹き出して、その反作用で進む」という形で説明できます。
高学年なら「作用・反作用」「推力」「酸化剤」などの言葉も加えてみましょう。低学年なら「空気を後ろに出したので、風船は反対へ進んだ」のような説明でも、仕組みの大事な部分を表現できます。
ロケットがなぜ飛ぶのかは「後ろへ出して、反対へ進む」と覚えよう
ロケットが飛ぶいちばん大切な理由は、エンジンからガスを後ろへ高速で噴射し、その反作用によってロケットが反対方向へ進むことです。小学生なら、まず「ふくらませた風船が空気を吹き出して飛ぶのと似ている」と考えると理解しやすいでしょう。
ロケットは空気をけったり、炎で地面を押したりして飛んでいるわけではありません。燃料と酸化剤などの推進剤を持ち、高温・高圧のガスをつくって噴射するため、空気がほとんどない宇宙でも進むことができます。
さらに宇宙へ物を運ぶには、重力に負けない推力だけでなく、目的の軌道へ入るための大きな速度が必要です。そのため、使い終えた段を切り離して軽くしたり、進む方向を変えたりしながら飛んでいきます。
「後ろへガスを勢いよく出すと、その反対方向へロケットが進む」ことが、ロケットが飛ぶ仕組みの基本です。この原理を知ってから打ち上げ映像を見ると、ロケットの下から噴き出すガスや途中で機体を切り離す理由も、今までよりわかりやすく見えてくるでしょう。


