はやぶさの次の計画は?はやぶさ2♯の2031年までの予定と「はやぶさ3」の現状

はやぶさの次の計画は?はやぶさ2♯の2031年までの予定と「はやぶさ3」の現状
はやぶさの次の計画は?はやぶさ2♯の2031年までの予定と「はやぶさ3」の現状
日本の宇宙開発とロケット

「はやぶさの次の計画は何だろう」「はやぶさ3は打ち上げられるの?」と気になっている人も多いのではないでしょうか。初代「はやぶさ」は2010年に地球へ帰還し、その後継機「はやぶさ2」も2020年に小惑星リュウグウの試料を地球へ届けました。

しかし、はやぶさ2の旅はそこで終わっていません。2026年7月には小惑星トリフネへの超接近フライバイを成功させ、現在は2027年と2028年の地球スイングバイ、さらに2031年の小惑星1998 KY26到着を目指しています。ここでは、はやぶさの次の計画を最新の日程に沿って整理し、「はやぶさ3」の現状や日本の次世代探査計画との違いもわかりやすく説明します。

はやぶさの次の計画は「はやぶさ2♯」で2031年まで続く

結論からいうと、現在進んでいる「はやぶさの次の計画」は、新しい探査機をすぐ打ち上げる計画ではありません。宇宙を飛行中の「はやぶさ2」をそのまま使い、2031年まで探査を続ける「はやぶさ2♯(シャープ)」が現在の計画です。

はやぶさ2は2020年12月6日にリュウグウの試料が入ったカプセルを地球へ届けましたが、探査機本体は地球へ着陸していません。カプセルだけを切り離し、本体は再び地球から離れて深宇宙へ向かいました。

2026年9月時点では、トリフネへのフライバイはすでに完了しています。これからの大きな予定は、2027年12月の地球スイングバイ、2028年6月の2回目の地球スイングバイ、2031年7月の小惑星1998 KY26へのランデブーです。
時期 はやぶさ2♯の計画・実績
2020年12月 リュウグウの試料入りカプセルを地球へ届け、拡張ミッションへ移行
2026年7月5日 小惑星トリフネへの超接近フライバイに成功
2027年12月 地球スイングバイを予定
2028年6月 2回目の地球スイングバイを予定
2031年7月 小惑星1998 KY26に到着し、ランデブー探査を行う予定

次の大きなイベントは2027年12月の地球スイングバイ

2026年7月のトリフネ探査を終えたはやぶさ2は、7月9日からイオンエンジンの運転を再開しました。次に予定されている大きなイベントが、2027年12月の地球スイングバイです。

スイングバイとは、惑星の重力と惑星自体の公転運動を利用して探査機の進行方向や速度を変える方法です。大量の燃料を消費せずに大きく軌道を変更できるため、長距離の惑星間飛行では非常に重要な技術になります。

はやぶさ2は2027年だけでなく2028年6月にも地球へ接近します。この2回の地球スイングバイによって軌道を整え、2031年に1998 KY26と出会えるコースへ入る計画です。

最終目的地は小惑星1998 KY26

はやぶさ2♯の最終目的地は「1998 KY26」と呼ばれる地球接近小惑星です。到着予定は2031年7月で、単に近くを高速で通り過ぎるのではなく、相対速度を小さくして小惑星の近くにとどまるランデブー探査を目指しています。

つまり、2026年のトリフネ探査と2031年の1998 KY26探査は方式が異なります。トリフネでは秒速約5.3kmという高速で一気に通過しましたが、1998 KY26では近くに滞在しながら詳しく調査することが重要になります。

なぜはやぶさ2は地球帰還後も飛び続けられるのか

もともとのはやぶさ2の主要任務は、リュウグウへ行き、試料を採取して地球へ届けることでした。その任務を達成した探査機を10年以上延長して利用できる背景には、探査機の設計と運用が順調だったことがあります。

地球へ帰ってきたのは探査機本体ではなくカプセル

「2020年にはやぶさ2が地球に帰還した」という表現から、探査機そのものが地上へ戻ったと思うかもしれません。実際には、オーストラリアへ帰還したのはリュウグウの試料を入れた再突入カプセルです。

探査機本体は地球へ接近した際にカプセルを分離し、自身は再び軌道を変更して深宇宙へ飛び去りました。この仕組みだったため、機体が正常で燃料も残っていれば、そのまま別の天体を目指すことができます。

イオンエンジン用の燃料が残っていた

拡張ミッションが検討された大きな理由の一つが、イオンエンジンで使用するキセノンが地球帰還時にも相当量残っていたことです。JAXAは地球帰還前から、残った能力を使ってどの天体まで到達できるか検討していました。

当初は到達可能な天体として354個が候補となり、必要な軌道変更量、天体の軌道精度、探査機を安全に運用できるかといった工学面に加え、科学的な価値も比較されました。その結果、最終候補を絞ったうえで1998 KY26へ向かう現在の計画が選ばれています。

はやぶさ2♯は、最初から2031年まで飛ばすために新しく造られた探査機ではありません。本来のリュウグウ探査を成功させた機体の残された能力を最大限活用する拡張ミッションです。

長期間使い続けること自体が重要な実験になる

拡張ミッションには、小惑星を観測する以外の価値もあります。2014年に打ち上げられた探査機を2031年まで使用できれば、約17年間に及ぶ深宇宙運用になります。

宇宙機器は放射線や大きな温度変化にさらされ、部品も徐々に劣化します。イオンエンジンを長期間使ったときに何が起こるのか、故障や性能低下にどう対応するのかといった経験は、将来さらに遠い天体を目指す探査機に直接役立ちます。

単に「余った燃料でもう一つ小惑星へ行く」という計画ではなく、長寿命の深宇宙探査機を運用するための実地試験でもあると考えると、拡張ミッションの意味がわかりやすくなります。

2026年のトリフネ探査では何がわかったのか

はやぶさ2♯の最初の大きな目標だったのが、小惑星トリフネです。正式番号は98943で、以前は仮符号の「2001 CC21」と呼ばれていました。2026年7月5日に実施されたフライバイは成功し、当初の計画段階ではわからなかった姿も明らかになりました。

表面から約400mまで接近して高速通過した

JAXAによるフライバイ後の解析では、はやぶさ2はトリフネの中心から約744m、表面からは約400mの位置まで接近しました。相対速度は秒速約5.3kmで、非常に高速です。

秒速5.3kmは1秒間に約5,300m進む速さです。最接近付近で詳細な画像を撮影できる時間はごく短く、しかも探査機自身を小惑星に衝突させない正確な航法が必要になります。

実際には目標としていた通過地点から約120mのずれに抑えられました。こうした超接近・高速飛行を実現できたこと自体が大きな工学成果です。詳しい結果はJAXAはやぶさ2プロジェクトのトリフネ探査結果でも公開されています。

トリフネは2つの天体が接触したような形だった

接近前のトリフネは詳しい形状がわかっていませんでしたが、はやぶさ2の画像によって、2つの部分がつながったような「コンタクトバイナリー」と呼ばれる形状であることが確認されました。

フライバイ直後の解析では長軸がおよそ840m、短軸がおよそ340m、平均直径は約540mとされています。光学カメラだけでなく、中間赤外カメラによる温度観測や近赤外分光計による観測にも成功しました。

レーザ高度計による測距にも成功しており、JAXAは小惑星のフライバイ時にレーザ測距に成功した世界初の例としています。今後データ解析が進めば、表面物質や形成過程についてさらに情報が増える可能性があります。

プラネタリーディフェンスにもつながる技術になった

トリフネ探査が注目される理由は、小惑星科学だけではありません。地球へ衝突する可能性のある小惑星に対処する「プラネタリーディフェンス」の技術実証という側面があります。

小惑星の軌道を変える方法の一つとして、探査機を高速で衝突させ、その運動量で軌道をわずかに変える方法があります。そのためには、遠く離れた小さな天体を正確に狙える技術が欠かせません。

トリフネへのフライバイは衝突実験ではありません。しかし、秒速5kmを超える速度で接近しながら狙った場所のすぐ近くを通過できたことは、将来の小惑星衝突回避技術につながる重要な実績です。

2027年と2028年の地球スイングバイは何のために行う?

トリフネ探査の次に予定されているのは、2027年12月と2028年6月の2回の地球スイングバイです。一見すると「目的地へ直接飛べばよいのでは」と思えますが、宇宙では目的地までの距離だけで航路を決めることはできません。

地球の重力を使って進む方向を変える

地球も小惑星も太陽の周囲を高速で公転しています。探査機が小惑星へ到着するには、その小惑星が将来到達する位置とタイミングを予測し、同じ場所へ正確に到達する軌道を作らなければなりません。

特に2031年の1998 KY26では、通過するだけではなくランデブーすることが目的です。小惑星に接近したときの相対速度も適切に調整する必要があり、そのための軌道づくりに2回の地球スイングバイが利用されます。

惑星の重力を使えば、探査機自身の推進剤だけでは難しい軌道変更が可能になります。長期間飛行するはやぶさ2にとって、燃料を節約しながら目的地へ向かうための重要な方法です。

「地球へ戻る」のではなく地球を利用して再出発する

2027年と2028年に地球へ接近すると聞くと、再びカプセルを帰還させるように感じるかもしれません。しかし、現在示されている計画では、リュウグウ探査のような新たなサンプルリターンを行うための地球帰還ではありません。

地球の近くを通過して重力を利用し、そのまま1998 KY26へ向かいます。その意味では「帰ってくる」というより、地球を巨大な軌道変更装置として利用すると考えたほうが正確です。

2031年に1998 KY26を探査したあと、もう一度地球へ戻るのかという疑問もありますが、現時点で公表されている拡張ミッションの中心は1998 KY26への到着と探査です。リュウグウのときのように新しい試料を採取して地球へ持ち帰る計画ではありません。

2031年に向かう1998 KY26はどんな小惑星?

はやぶさ2♯の最終目標である1998 KY26は、リュウグウとは大きさも回転速度も大幅に異なる小惑星です。しかも近年の観測によって、以前考えられていた以上に小さく、速く回転していることが判明しました。

最新観測では直径約11m・自転周期約5.35分

1998 KY26について古い資料を見ると、「直径約30m」「自転周期約10.7分」と書かれていることがあります。これは以前の観測から推定されていた数値です。

ところが2024年の地上観測と過去のレーダーデータを組み合わせた研究によって、推定値が大きく更新されました。2025年に発表された研究では、直径は11±2m、自転周期は約5.3516分とされています。

JAXA宇宙科学研究所の現在のはやぶさ2ミッション紹介でも、1998 KY26について直径約11m、自転周期約5分と説明されています。

「1998 KY26は直径30m、自転周期約11分」という情報を見かけても、計画そのものが変更されたわけではありません。目標天体は同じ1998 KY26ですが、観測精度が上がったことで天体の大きさと自転周期の推定値が更新されています。

リュウグウとは比較にならないほど小さい

リュウグウは直径約900m規模の小惑星でした。それに対して1998 KY26は最新推定で直径約11mです。探査機の太陽電池パドルまで含めた大きさと比較しても、「天体を探査する」という感覚が変わるほど小さな対象です。

小さな天体は地上の望遠鏡から詳しく観察することが難しく、表面が一枚岩なのか、小さな岩石が集まった構造なのかといった基本的な性質さえ十分にはわかりません。探査機が実際に近くまで行く意義が非常に大きい対象です。

5分ほどで1回転する特殊な環境を直接調べる

1998 KY26は約5.35分で1回転する高速自転天体です。24時間で1回転する地球と比べれば、その速さがどれほど極端かわかります。

小さな天体では重力そのものが非常に弱く、さらに高速で回転すると遠心力の影響が大きくなります。そのため、リュウグウのような大きな小惑星とは表面物質の動き方や天体内部の構造が異なる可能性があります。

2031年の最大の注目点は、人類がこれまで探査したことのない「10m級で高速自転する小惑星」を至近距離から直接調べられることです。これは小惑星の形成を理解するだけでなく、同程度の小惑星が将来地球へ接近した場合の対策を考えるうえでも重要な情報になります。

「はやぶさ3」はある?日本の次の探査計画との違い

はやぶさ2の成功を見ると、当然「次ははやぶさ3では?」と考えたくなります。しかし、2026年9月時点でJAXAが公開している公式の科学衛星・探査機情報では、「はやぶさ3」という名称の探査機が正式プロジェクトとして示されているわけではありません。

当面は現在のはやぶさ2自身が次の探査を担当する

初代はやぶさの次に「はやぶさ2」が開発されたため、単純に考えると次は「はやぶさ3」になりそうです。ただし、宇宙探査計画はスマートフォンのように番号順で新型機が登場するわけではありません。

現在のはやぶさ2は2031年まで現役で活動する予定です。このため、「はやぶさの次の計画」という意味では、まだ新しい3号機へ世代交代したのではなく、同じはやぶさ2が拡張ミッションへ進んでいる段階だと理解するのが適切です。

はやぶさの技術はMMXへ引き継がれている

名前は「はやぶさ3」でなくても、日本のサンプルリターン技術は別の計画へ受け継がれています。その代表が火星衛星探査計画「MMX(Martian Moons eXploration)」です。

MMXは火星の衛星フォボスへ向かい、表面の試料を採取して地球へ持ち帰ることを目指す計画です。小惑星からサンプルを持ち帰ったはやぶさ、はやぶさ2から一段進み、火星圏からのサンプルリターンを目指しています。

JAXAはMMXについて2026年度の打ち上げを目標として準備を進めています。詳しい計画はMMX公式サイトのミッション概要で確認できます。

DESTINY+も小天体探査技術を発展させる計画

もう一つ関係が深いのが、深宇宙探査技術実証機「DESTINY+」です。JAXAの計画では2028年度の打ち上げが示されており、小天体への高速フライバイや深宇宙航行技術の実証を担います。

現在の計画では地球接近小惑星アポフィスへの接近を経て、ふたご座流星群の母天体として知られるフェートンを探査する方向で準備が進められています。はやぶさ2の長期間にわたるイオンエンジン運用や高速フライバイで得られた知見も、こうした次世代ミッションにつながります。

つまり、日本の小天体探査は「はやぶさ3」という1機の後継機だけで続くのではなく、サンプルリターン、高速フライバイ、プラネタリーディフェンスなど複数の方向へ発展していると見るほうが実態に近いでしょう。

「次のはやぶさ」を探すときは機体名だけを見るのではなく、はやぶさで確立したイオンエンジン、精密航法、着陸・試料採取、地球帰還などの技術が、どの探査計画へ引き継がれているかを見ると日本の宇宙探査の流れが理解しやすくなります。

はやぶさの次の計画は2031年の1998 KY26探査が大きなゴール

まとめ
まとめ

はやぶさの次の計画として現在進んでいるのは、新たな「はやぶさ3」ではなく、はやぶさ2自身による拡張ミッション「はやぶさ2♯」です。2026年7月には小惑星トリフネへの超接近フライバイに成功し、表面から約400mという距離を秒速約5.3kmで通過しました。

今後は2027年12月と2028年6月に地球スイングバイを行い、2031年7月に最終目的地1998 KY26へ到着する計画です。1998 KY26は最新の観測で直径約11m、自転周期約5.35分と推定されており、人類がこれまで直接探査したことのない極小・高速自転小惑星です。

一方、「はやぶさ3」という名称の正式プロジェクトが現在示されているわけではありません。ただし、はやぶさシリーズで培われた技術はMMXやDESTINY+などへ着実に受け継がれています。したがって、これから注目すべき直近の節目は2027年の地球スイングバイ、その先にある最大の目標が2031年の1998 KY26探査と考えるとわかりやすいでしょう。

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