「日本の宇宙港はどこにあるの?」「北海道と大分の宇宙港は同じもの?」と疑問に感じる人もいるでしょう。日本では民間宇宙ビジネスの拡大に伴い、北海道や大分、和歌山などで「宇宙港」「スペースポート」と呼ばれる拠点の整備や活用が進んでいます。
結論からいうと、北海道の代表的な宇宙港は大樹町の北海道スペースポート(HOSPO)、大分は国東市にある大分空港を活用するSPACEPORT OITA構想です。ただし、両者はロケットの使い方や現在の整備状況が大きく異なります。種子島や和歌山を含め、日本の主な宇宙港・ロケット射場との違いも整理します。
日本の宇宙港はどこ?北海道は大樹町、大分は国東市

日本の宇宙港について最初に知っておきたいのは、「日本の宇宙港は1か所だけ」というわけではないことです。国やJAXAが利用する従来型のロケット射場に加え、民間企業が利用する商業宇宙港や、既存空港を宇宙輸送に活用する構想が各地で進んでいます。
| 場所 | 主な施設・計画 | 特徴 |
|---|---|---|
| 北海道大樹町 | 北海道スペースポート(HOSPO) | 民間向け商業宇宙港。ロケット射場や滑走路を整備 |
| 大分県国東市 | 大分空港・SPACEPORT OITA | 既存空港を利用する水平型宇宙港構想 |
| 和歌山県串本町 | スペースポート紀伊 | 民間企業スペースワンの小型ロケット射場 |
| 鹿児島県南種子町 | 種子島宇宙センター | H3など大型ロケットを打ち上げるJAXAの主要射場 |
| 鹿児島県肝付町 | 内之浦宇宙空間観測所 | イプシロン系や観測ロケットなどの射場 |
北海道の宇宙港は十勝地方の大樹町
北海道スペースポート、通称HOSPOがあるのは、北海道広尾郡大樹町です。北海道東部の十勝地方に位置しており、帯広市から南へ向かった太平洋側にあります。
施設の中心となる大樹町多目的航空公園には滑走路や格納庫などがあり、その周辺でロケットや航空宇宙関連の実験が行われてきました。大樹町は1980年代から航空宇宙産業の誘致に取り組んできた地域で、短期間に突然宇宙港が造られたわけではありません。
北海道スペースポートは2021年に本格稼働し、民間企業や大学、研究機関、政府機関などが利用できる商業宇宙港として整備が進められています。
大分の宇宙港は国東半島にある大分空港
大分県で宇宙港として活用が検討されているのは、国東市にある大分空港です。大分市中心部に宇宙港が造られているわけではなく、大分県北東部の国東半島に位置する既存の空港を利用します。
そのため、大分の宇宙港は北海道のように広い土地にロケット発射台を新設して垂直に打ち上げることを中心とした計画とは性格が異なります。長い滑走路を持つ空港という特徴を宇宙輸送に生かすのがポイントです。
宇宙港とロケット発射場は必ずしも同じ意味ではない
宇宙港を英語では「スペースポート」と呼びます。ロケットや宇宙船などが宇宙へ出発したり、宇宙から帰還したりするための拠点を広く指す言葉です。
ロケットを垂直に発射する施設だけでなく、飛行機のように滑走路を使う宇宙機や、航空機からロケットを切り離す方式に対応する空港も宇宙港になり得ます。この違いが、北海道と大分の話を理解するときに重要です。
北海道スペースポートはロケット打ち上げを目指す商業宇宙港

北海道スペースポート(HOSPO)は、大樹町とSPACE COTAN株式会社が運営する民間に開かれた商業宇宙港です。ロケットだけでなく、スペースプレーン、航空機、気球など多様な航空宇宙分野で利用できる拠点づくりが進められています。
北海道が宇宙港に向いている理由
ロケット射場では、単に広い土地があればよいわけではありません。打ち上げ後のロケットが安全な方向へ飛行できることや、航空機・船舶への影響を抑えやすいことも重要です。
大樹町は東側と南側に太平洋が広がっています。北海道スペースポートによると、東方向への打ち上げと南方向への打ち上げの両方を検討しやすく、さまざまな人工衛星の軌道に対応しやすいことが強みとされています。
周辺に広い土地があるため施設を拡張しやすい点も重要です。宇宙ビジネスではロケットの大型化だけでなく打ち上げ回数の増加も求められるため、将来の設備追加が可能かどうかは宇宙港の価値を左右します。
滑走路とロケット射場の両方を備える
北海道スペースポートには1,300mの滑走路と格納庫などがあります。滑走路は無人航空機やドローン、航空機などの飛行実験にも利用できます。
2024年には従来の1,000mから300m延伸した滑走路の整備が完了しました。ロケットだけに用途を限定せず、航空宇宙分野の研究開発を幅広く受け入れられることがHOSPOの特徴です。
一方、人工衛星を宇宙空間の軌道へ投入するロケットを高頻度で打ち上げるには、専用射場の整備が重要になります。その中心となるのがLaunch Complex 1、略して「LC1」です。
人工衛星用ロケット射場LC1の整備が進む
大樹町では2022年からLC1の整備を進めてきました。2026年度には完成を迎える計画とされており、北海道スペースポートは新しい宇宙輸送拠点として重要な段階に入っています。
将来的には高頻度の打ち上げに対応するLC2、大型ロケットや有人ロケットも視野に入れたLCX、さらに高速2地点間輸送などを想定した3,000m級滑走路の構想も示されています。
ただし、将来構想として発表されている設備がすべて現在完成しているわけではありません。現在利用できる施設と、今後整備を目指す施設を分けて考える必要があります。
すでにロケットの打ち上げ実績もある
大樹町ではインターステラテクノロジズによる観測ロケットMOMOなど、以前からロケット打ち上げが行われてきました。2025年7月には、台湾企業の日本法人jtSPACEによるサブオービタルロケットの打ち上げもHOSPOで実施されています。
サブオービタルとは、地球を周回する人工衛星の軌道まで入るのではなく、宇宙空間に到達した後に地球へ戻るような飛行方式です。したがって、人工衛星を継続的に軌道投入する商業射場としての本格運用と、これまでの実験・サブオービタル打ち上げは区別して考えるとわかりやすいでしょう。
大分の宇宙港は大分空港を使う水平型のプロジェクト

大分のSPACEPORT OITAは、北海道とは発想がかなり異なります。大分空港にはすでに旅客機が離着陸しており、この既存インフラを宇宙輸送にも利用しようという取り組みです。
大分空港には約3,000mの滑走路がある
大分空港には大型航空機にも対応できる3,000m級の滑走路があります。この長い滑走路が、宇宙機の離着陸や宇宙輸送拠点としての活用を検討する大きな理由の一つです。
北海道のような垂直発射型ロケットでは、発射台から真上に近い方向へロケットが上昇します。一方、水平型では航空機や翼を持った宇宙機が滑走路を利用するため、通常の空港設備を活用できる可能性があります。
北海道は「ロケットを打ち上げる射場」を中心に発展しているのに対し、大分は「滑走路を使う宇宙輸送拠点」としての特徴が強い、と考えると両者の違いが理解しやすくなります。
当初のヴァージン・オービット計画は実現していない
大分空港の宇宙港計画が広く知られるきっかけになったのが、米国のヴァージン・オービットとの連携です。航空機の翼の下にロケットを搭載し、上空でロケットを切り離して人工衛星を打ち上げる「空中発射方式」を大分空港で実施する計画が進められていました。
しかし、ヴァージン・オービットは2023年に事業を停止しました。そのため、以前の記事などに掲載されている「大分空港からヴァージン・オービットのロケットを打ち上げる」という予定は、現在の計画として受け取らないよう注意が必要です。
現在はDream Chaserの大分空港利用を検討
ヴァージン・オービットの事業停止後も、大分県が宇宙港への取り組みをやめたわけではありません。大分県は米国Sierra Space、兼松、日本航空などと連携し、宇宙往還機「Dream Chaser」の大分空港利用について検討を続けています。
Dream Chaserは翼を持った再使用型の宇宙機で、滑走路へ着陸できることが大きな特徴です。大分空港をアジアにおける着陸拠点などとして活用することを目指し、法規制や運用、周辺経済への効果などについて検討されています。
2026年8月には国東市も「国東市宇宙港関連構想」を策定しており、2050年を見据えて産業振興、観光、人材育成などにつなげる方針を示しています。したがって、大分の宇宙港はなくなったのではなく、当初の空中発射計画から別の形へ重点が移っていると理解するのが適切です。
大分空港から現在ロケットが定期的に飛んでいるわけではない
「大分空港が宇宙港になった」と聞くと、空港へ行けばロケットの打ち上げを見られると思うかもしれません。しかし、2026年9月時点で大分空港から人工衛星ロケットが定期的に打ち上げられているわけではありません。
現在は宇宙往還機の活用や宇宙関連産業の集積を目指している段階です。大分県では宇宙ビジネスへの参入支援や人材育成も進めており、単に宇宙機が離着陸する場所だけではなく、周辺に関連産業を育てることも宇宙港プロジェクトの重要な目的となっています。
北海道と大分の宇宙港は何が違う?

北海道と大分はいずれも「宇宙港」という言葉で紹介されますが、同じ設備を造って競争しているわけではありません。狙っている宇宙輸送の方式や現在の段階を比較すると、その違いがはっきりします。
| 比較項目 | 北海道スペースポート | 大分空港 |
|---|---|---|
| 所在地 | 北海道広尾郡大樹町 | 大分県国東市 |
| 中心となる設備 | ロケット射場・滑走路 | 既存の空港滑走路 |
| 宇宙輸送の方向性 | 垂直型ロケットを中心に多様な機体へ対応 | 水平型宇宙輸送・宇宙往還機の活用を検討 |
| ロケット打ち上げ実績 | 観測・サブオービタルロケットなどの実績あり | 当初予定された人工衛星打ち上げは未実現 |
| 今後のポイント | 人工衛星打ち上げ用射場の整備と高頻度化 | Dream Chaserなどを含む水平型宇宙港の実現 |
「今ロケットを打ち上げている場所」を知りたいなら北海道
検索している人の目的が「北海道と大分のどちらで実際にロケットが飛んでいるのか」ということであれば、北海道のほうがイメージに近いでしょう。大樹町ではすでに複数のロケット打ち上げや航空宇宙実験が行われています。
人工衛星を地球周回軌道へ運ぶ商業ロケットを高頻度で打ち上げる拠点については、専用設備の拡充が進んでいる段階です。そのため「完成済みの巨大ロケット基地」と考えるより、既存施設を使いながら本格的な商業射場へ拡張している宇宙港と捉えるのが正確です。
大分は空港を宇宙への玄関口に変える考え方
大分の特徴は、新しいロケット基地をゼロから造るのではなく、すでに国内線が発着している大分空港を宇宙交通にも利用しようとしている点です。
将来、滑走路へ着陸できる宇宙往還機の運用が一般化すれば、空港が航空交通と宇宙交通の両方を扱う時代が来る可能性があります。大分県が狙っているのは、まさにそのような新しい形の宇宙港です。
どちらが優れているかではなく用途が違う
北海道と大分を単純に「どちらの宇宙港がすごいか」で比較するのは適切ではありません。ロケットを垂直に打ち上げるために必要な条件と、翼を持つ宇宙機を離着陸させるために必要な条件は異なるからです。
北海道は広い土地と東・南に開けた海を生かしたロケット射場としての強みがあり、大分は既存の3,000m級滑走路や交通インフラを生かせます。将来的には、それぞれが異なるタイプの宇宙輸送を担う関係になる可能性があります。
日本の宇宙港・ロケット射場は北海道と大分だけではない

「日本でロケットを打ち上げている場所」という意味で宇宙港を探しているなら、北海道と大分だけを見ると不十分です。日本には長い歴史を持つJAXAの射場に加え、民間企業による新しいロケット射場があります。
鹿児島県の種子島宇宙センター
日本のロケット打ち上げ場所として最も有名なのが、鹿児島県南種子町にあるJAXAの種子島宇宙センターです。総面積は約970万平方メートルで、JAXAは日本最大のロケット発射場としています。
大型ロケット発射場や衛星組立棟などを備え、日本の基幹ロケットH3などの打ち上げを行う重要拠点です。人工衛星の最終チェック、ロケットへの搭載、組み立て、打ち上げ、追跡まで一連の作業を行います。
「日本を代表するロケット基地はどこ?」という質問であれば、現在も種子島宇宙センターは最初に挙げるべき場所です。
鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所
鹿児島県肝属郡肝付町には、JAXAの内之浦宇宙空間観測所があります。こちらも日本の宇宙開発を長年支えてきたロケット射場です。
科学観測ロケットや科学衛星の打ち上げ、宇宙機の追跡、データ取得などを行っています。イプシロン系ロケットの発射場として知られており、種子島とは役割が異なります。
種子島宇宙センターと内之浦宇宙空間観測所はいずれも鹿児島県ですが、同じ場所ではありません。種子島は島内の南種子町、内之浦は九州本土側の肝付町にあります。
和歌山県には民間射場スペースポート紀伊がある
和歌山県東牟婁郡串本町には、スペースワンが運営する「スペースポート紀伊」があります。民間企業による小型ロケット打ち上げを目的とする射場で、小型ロケット「カイロス」の打ち上げが行われています。
カイロスは2024年の初号機、2号機に続き、2026年3月には3号機が打ち上げられましたが、飛行途中で中断措置が取られ、予定していたミッション完遂には至りませんでした。
それでも、専用の民間ロケット射場から実際に打ち上げが行われている点は重要です。北海道スペースポートとともに、日本の民間宇宙輸送を考えるうえで注目される施設といえます。
宇宙港を見学したいなら場所だけでなく公開施設を確認しよう

「日本の宇宙港はどこ?」と検索する人の中には、実際に訪れてみたい人もいるでしょう。ただし、宇宙港は一般的な観光施設とは異なり、ロケット射場そのものへ自由に入れるとは限りません。
北海道では大樹町宇宙交流センターSORAを見学できる
北海道スペースポートを訪れるなら、大樹町宇宙交流センターSORAがわかりやすい施設です。大樹町多目的航空公園内にあり、大樹町で行われてきた航空宇宙実験や北海道スペースポートの取り組みを紹介しています。
実際に大樹町で打ち上げられたロケットやJAXA関連の展示などがあり、宇宙港の背景を理解できます。公式案内では通常の開放期間は4月から11月で、冬季は休館となるため、旅行前には最新情報を確認したほうがよいでしょう。
所在地は北海道広尾郡大樹町字美成169番地の大樹町多目的航空公園内で、帯広空港から車で約40分、JR帯広駅から車で約70分が目安とされています。
大分空港は通常の旅客空港として利用できる
大分の場合は宇宙港専用施設へ向かうというより、普段から航空旅客が利用している大分空港そのものがプロジェクトの舞台です。
空港では宇宙港に関連した展示やイベントなどが行われることがありますが、現時点で宇宙船が日常的に離着陸している施設ではありません。宇宙港を目的に訪問する場合は、イベントや展示の開催状況を大分県や大分空港の公式情報で確認するとよいでしょう。
ロケット打ち上げは予定変更が珍しくない
北海道、和歌山、種子島などでロケット打ち上げを見たい場合、旅行日程を打ち上げ予定日だけで決めるのは注意が必要です。ロケットは天候だけでなく、機体、地上設備、安全確認、海上や航空の状況などによって延期されることがあります。
数時間の延期だけでなく、数日以上予定が変わるケースもあります。打ち上げ時には立入規制や交通規制が設定される場合もあるため、見学可能な場所を自分で判断せず、運営会社や自治体が公表する案内に従うことが大切です。
日本の宇宙港は北海道・大分だけでなく役割別に見るとわかりやすい
日本の宇宙港がどこにあるのかを知りたい場合、まず北海道は大樹町、大分は国東市の大分空港と覚えておけばよいでしょう。ただし、2つの宇宙港は同じ目的の施設ではありません。
北海道スペースポートは、広い土地と太平洋に面した地理条件を生かし、ロケットの打ち上げや航空宇宙実験を受け入れる商業宇宙港です。人工衛星打ち上げに対応するLC1などの整備も進められています。
大分は既存の大分空港を活用する水平型宇宙港を目指しており、当初のヴァージン・オービットによる空中発射計画は実現しませんでした。現在はDream Chaserなどの宇宙往還機を含む新たな活用方法や、宇宙関連産業の集積が検討されています。
さらに、日本にはH3を打ち上げる鹿児島県の種子島宇宙センター、内之浦宇宙空間観測所、民間射場である和歌山県のスペースポート紀伊もあります。「ロケットを実際に打ち上げる場所を探しているのか」「将来の宇宙輸送拠点を含めた宇宙港を知りたいのか」を分けて考えると、日本の宇宙港の全体像を理解しやすくなります。



