「宇宙ステーションでスマホは使えるの?」「地球と同じように電話やネットができる?」と疑問に思う人もいるでしょう。結論からいうと、国際宇宙ステーション(ISS)ではスマートフォンを使えるようになっていますが、地上で使う場合とは通信方法が大きく異なります。
特に注意したいのは、スマホを使えることと、ドコモ・au・ソフトバンクなどの携帯電話回線がつながることは別だという点です。この記事では、ISSでスマホがどこまで使えるのか、インターネットや電話はどうやって地球につながっているのか、過去と現在で事情が変わった理由までわかりやすく解説します。
宇宙ステーションでスマホは使える?2026年現在は使用例がある

国際宇宙ステーションでスマホが使えるかという疑問への現在の答えは、「スマートフォンそのものは使える。ただし、地上の携帯電話と同じ使い方ができるわけではない」となります。
以前のISSでは一般的な個人用スマートフォンの持ち込みに制限がありましたが、2026年には状況が変化しています。NASAのCrew-12では、クルーが最新のスマートフォンを軌道上で使用することが公式に発表されました。
| スマホの使い方 | ISSでの利用 |
|---|---|
| スマホ本体を使用する | 使用例あり |
| 写真・動画を撮影する | 可能 |
| 地上の4G・5G回線につなぐ | 基本的に不可 |
| ISSの通信環境を利用してインターネット通信する | 通信環境あり |
| 地球の家族や友人と連絡する | IP電話やビデオ通信などの手段あり |
NASAのCrew-12では最新スマートフォンが宇宙へ
NASAは2026年2月、国際宇宙ステーションへ向かったSpaceX Crew-12について、クルーが軌道上で最新のスマートフォンを使用すると発表しました。用途として挙げられているのは、家族向けのメッセージ撮影、宇宙での旅の記録、宇宙飛行の様子を世界へ伝えることなどです。
つまり、「ISSには普通のスマホが存在しない」という説明は、現在では必ずしも正しくありません。宇宙で市販技術を活用する流れが進み、スマートフォンも映像記録などに利用されるようになっています。
スマホがあるからといって携帯回線がつながるわけではない
ここで最も勘違いしやすいのが、「スマホを宇宙へ持って行けば、そのまま電話やネットができるのでは?」という点です。しかし、地上で契約している携帯電話会社のSIMや4G・5G通信を、そのままISSで利用することは基本的にできません。
普段のスマホは近くにある携帯電話基地局と電波をやり取りしています。ISSは地上約400kmを飛行しており、地上用の携帯電話ネットワークが通常のサービスエリアとして想定している場所ではありません。
「スマホを使える」と「自由に持ち込める」も別
2026年にスマートフォンの利用例が確認できるとはいえ、宇宙飛行士が好きなスマホを自由にポケットへ入れて宇宙へ持って行けるという意味ではありません。宇宙船やISSへ持ち込む機器には、安全性や通信、バッテリー、材料などさまざまな条件があります。
どの機種や機能を使えるかは、宇宙機関やミッションごとの審査・運用ルールによって変わります。「地上で買ったスマホなら何でもそのままISSで使える」と考えないことが重要です。
ISSでインターネットや電話はどうやって地球につながる?

ISSには地球と大量のデータをやり取りする通信システムがあります。スマホの基地局へ直接アクセスしているのではなく、ISSから通信衛星や地上局などを経由して地球側のネットワークへ接続します。
そのため、宇宙飛行士はメールやインターネット、IP電話、ビデオ通信といったサービスを利用できます。仕組みとしては「宇宙にある巨大な施設が専用回線で地球のネットワークにつながっている」と考えるとわかりやすいでしょう。
ISSの中には無線LANがある
ISSではWireless LAN、つまり無線LANが利用されています。NASAの技術資料でも、宇宙飛行士が携帯型コンピューターを使用するためにISS内部でWLANが運用されていることが確認できます。
2024年のNASAの運用記録には「CloudNet」と呼ばれる船内ネットワークが登場し、承認されたタブレットなどの機器からインターネットへアクセスできることも説明されています。
地球の家庭でWi-Fiルーターにスマホやタブレットを接続する状況と考え方は似ています。ただしISSでは重要な運用システムと共存するため、接続できる端末やネットワークは厳格に管理されています。
ISSと地球の間は通信衛星などを経由する
ISSから地球への通信は、地上の携帯基地局に向けて直接行うものではありません。NASAは追跡・データ中継衛星などを使った通信ネットワークを運用しており、ISSのデータは中継衛星から地上設備へ送られます。
NASAによると、2019年にはISSから地球へデータを送る能力が600Mbpsまで引き上げられました。2026年に公開されているNASAの通信ネットワークの説明でも、この600Mbpsへの増強が紹介されています。
宇宙から電話やビデオ通話もできる
スマホの携帯電話回線が使えなくても、宇宙飛行士は地球と会話できます。JAXAは、ISSでIP電話を利用して家族や友人へ電話したり、メールを交換したり、インターネットでニュースを確認したりできると説明しています。
家族とのテレビ会議なども以前から行われてきました。したがって、宇宙飛行士が何カ月も完全に地球との連絡を絶って生活しているわけではありません。
ただし、これは宇宙飛行士のスマホへ地球から普通の電話番号で電話をかけているわけではなく、ISSに用意された通信環境を利用した連絡です。
宇宙ステーションで普通の4G・5Gが使えない理由

「ISSは地上から約400kmなら、スマホの電波が少しくらい届くのでは?」と思うかもしれません。しかし、携帯電話は単純に電波が届けば通信できる仕組みではありません。
基地局との接続やネットワークへの登録、移動中の基地局切り替えなどが必要です。ISSの高度と速度を考えると、地上向けに作られた一般的な携帯電話ネットワークを通常通り利用することは現実的ではありません。
スマホは携帯基地局と通信している
普段スマホで電話やインターネットが利用できるのは、街中などに設置された基地局と電波を送受信しているためです。基地局がある場所を中心にサービスエリアが作られ、スマホが移動すると接続する基地局も切り替わっていきます。
JAXA宇宙科学研究所も、携帯電話は基地局と無線通信することで使用でき、基地局のない場所では通信できなくなるという基本的な仕組みを説明しています。
ISSはその携帯電話サービスを提供するために設置された基地局網のはるか上を飛んでいるため、日本の携帯電話会社と契約しているだけでは通信できません。
ISSは秒速約7.7kmで移動している
ISSは地上約400kmを秒速約7.7kmという非常に速い速度で移動しています。地球を一周するのにかかる時間は約90分です。仮に地上基地局から漏れ出した電波を一時的に受信できる状況があったとしても、それだけで通常の携帯電話サービスを安定して利用できるわけではありません。
地上の4G・5Gネットワークは、道路や鉄道などを移動する利用者を想定して設計されています。地球低軌道を高速で飛び続ける宇宙ステーションを通常の携帯電話ユーザーとして扱うネットワークではないためです。
宇宙専用の通信設備があるので携帯基地局を使う必要もない
そもそもISSには、ミッション運用に必要なデータや映像、音声を地球とやり取りするための専用通信設備があります。安全に宇宙ステーションを運用するには、地上の携帯電話網へ偶然つながることを期待するより、宇宙向けに設計された通信システムを使用する方が合理的です。
このため「宇宙でもスマホを使う」という場合、携帯電話として基地局につなぐことよりも、カメラやコンピューターとして活用したり、承認されたネットワークを利用したりする方向が中心になります。
衛星通信対応スマホならそのままISSでも使えるとは限らない
近年は、人工衛星との通信機能を備えたスマートフォンも登場しています。そのため「衛星につながるスマホならISSでも普通に通信できるのでは」と考える人もいるでしょう。
しかし、市販スマホの衛星通信サービスは、地上の利用者と特定の衛星システムを接続することを前提に設計されています。高度約400kmを高速で周回する宇宙船内から利用することを保証したサービスではありません。
宇宙ステーションではスマホを何に使える?

携帯電話回線が利用できないなら、宇宙へスマホを持って行く意味がないようにも感じます。しかし、現在のスマホには高性能なカメラやコンピューター、各種センサーが搭載されており、「電話」以外にも多くの用途があります。
実際にISSでは、以前からスマートフォン技術を研究や作業支援へ活用する実験が行われてきました。
写真や動画の撮影に使える
現在のスマートフォンが宇宙で特に役立つ用途の一つが撮影です。NASAがCrew-12へのスマートフォン導入で示している用途にも、宇宙飛行の記録や家族向けのメッセージ撮影が含まれています。
スマホなら写真だけでなく高画質な動画も撮れ、本体だけで確認や簡単な編集まで行えます。大型のカメラとは別に、すぐ取り出して記録できる小型端末があることには大きな意味があります。
最新スマホのカメラ性能が向上したことで、宇宙飛行士自身が日常的な船内生活を記録しやすくなったという見方もできます。
研究用端末としてスマホが使われた例もある
スマートフォンがISSへ行ったのは2026年が初めてではありません。2011年には、スマートフォンを利用したNASAの「Smart SPHERES」という研究のために端末がISSへ運ばれています。
この研究では、市販スマートフォンが持つカメラ、加速度センサー、ジャイロセンサーなどを利用し、ISS内を移動する小型ロボットの能力を向上させる試みが行われました。ただし、この端末は地上で購入した状態のままではなく、宇宙で使用するための変更が加えられていました。
スマホは大量生産されるため、高性能なカメラやセンサー、CPUを比較的コンパクトにまとめられます。こうした市販技術を宇宙開発に利用できれば、専用品だけを一から開発するより効率的になる場合があります。
作業手順の確認にもスマートフォン技術が利用された
欧州宇宙機関ESAでは、「mobiPV」というシステムでAndroidスマートフォンを活用した実験が行われました。宇宙飛行士が作業中に手順を確認したり、映像・音声などを使って地上の専門家から支援を受けたりするための仕組みです。
無重力のISSでは、紙のマニュアルを机に置いて作業するという地上では当たり前の行動も簡単ではありません。スマートフォンやタブレットのような小型端末は、作業者の近くに固定して情報を表示できる点でも便利です。
SNSやメッセージは通信環境と運用ルール次第
ISSにはインターネット環境があり、宇宙飛行士によるSNS投稿も長年行われています。JAXAによると、2010年にクルー支援LANが利用可能になり、ISSクルーがWebへアクセスできる環境が整いました。
ただし、宇宙飛行士が投稿した写真や文章を見たからといって、「個人スマホで地上と同じSNSアプリを開き、携帯回線から直接投稿している」とは限りません。端末やミッションによって、データを地上スタッフへ送り投稿してもらう場合などもあります。
重要なのは、ISSからインターネットへ情報を送れることと、市販スマホを地上と完全に同じ方法で使えることを区別することです。
「ISSではスマホ禁止」と「スマホを使える」の情報が両方あるのはなぜ?

宇宙ステーションとスマホについて調べると、「個人スマホは持って行けない」という説明と「宇宙飛行士がスマホを使っている」という説明の両方が見つかることがあります。これは情報が間違っているとは限らず、発信された時期によって状況が変わっているためです。
以前は個人のスマートフォンを持ち込めないと説明されていた
JAXAが大西卓哉宇宙飛行士への質問として公開した過去の回答では、「宇宙に自分のスマートフォンを持っていくのですか?」という質問に対し、個人の電子機器は安全上持って行けないこと、携帯電話の電波も届かないことが説明されていました。
ESAも2018年の解説で、ISSには地上で一般的に使われているようなスマートフォンはなく、個人のスマートフォンは地上に置いていくと説明していました。
そのため、数年前の記事に「宇宙飛行士はスマホを持って行けない」と書かれていても、その時点の運用としては不自然ではありません。
昔から実験用スマホは宇宙へ行っていた
一方、スマートフォンそのものがISSでまったく使用されたことがなかったわけでもありません。研究用に改造されたスマートフォンは2010年代から利用されています。
過去のSmart SPHERESで使用された端末では、ISSの認証に対応するためバッテリーを変更したり、携帯電話通信用のGSM関連部品を取り外したり、ガラス破損時への対策を加えたりしていました。
つまり以前の状況は、「スマホという機械は宇宙で使えない」のではなく、「地上で普通に使う個人用スマホをそのまま自由に持ち込むことはできない」という意味に近かったと考えると理解しやすくなります。
2026年に一般的な最新スマホの利用が大きく前進した
大きな変化が確認できるのが2026年です。NASAはCrew-12について、クルーが最新スマートフォンを軌道上で利用すると公式に説明しています。従来の「ISSには普通のスマートフォンはない」という状況から、スマホを積極的に宇宙飛行の記録へ使う方向へ変化したことがわかります。
そのため現在「宇宙ステーションでスマホは使える?」と聞かれた場合、単純に「使えない」と回答するのは適切ではありません。2026年現在は使用例があるものの、携帯電話回線や持ち込み条件まで地上と同じになったわけではないという説明が最も実態に近いでしょう。
宇宙機器では安全性の確認が重要
なぜスマホを持って行くだけなのに厳しい条件があるのかというと、ISSは地上とはまったく異なる環境だからです。電子機器のバッテリーが発火しても、宇宙ステーションでは簡単に外へ逃げることができません。
材料から発生するガス、電波が他の機器へ与える影響、バッテリーの安全性、破損した場合の危険なども考慮する必要があります。充電設備についても家庭のコンセントをそのまま使う環境とは異なります。
宇宙ステーションとスマホについてよくある疑問

ISSにスマホが持ち込まれるようになると、「電話番号にかければ宇宙飛行士へつながるのか」「LINEやYouTubeも普通に使えるのか」など、地上でのスマホ利用から連想した疑問も出てきます。ここでは混同しやすいポイントを整理します。
宇宙飛行士のスマホへ普通に電話をかけられる?
基本的にはできません。ISSにスマートフォンがあっても、日本の携帯基地局につながって待ち受け状態になっているわけではないため、地上から通常の携帯電話番号へ発信して宇宙飛行士につながるという仕組みではありません。
宇宙飛行士と地上との通話にはISSの通信システムが利用されます。JAXAも、ISSの宇宙飛行士がIP電話を利用して家族や友人へ連絡できることを案内しています。
LINEやInstagram、YouTubeは使える?
ISSにはインターネット接続環境があるため、技術的には地球のWebサービスへアクセスできる環境があります。しかし、特定のスマホアプリを宇宙飛行士が自由に利用できるかどうかは別問題です。
接続する端末の承認、NASAなどの情報セキュリティ規則、ミッション上の運用、通信状況などが関係します。そのため「ISSなら自分のスマホでLINEもInstagramもYouTubeも地上とまったく同じように使える」と断定することはできません。
なお、過去にはISSから動画を見ることについて、回線や接続方法の関係で快適な動画視聴が難しいと宇宙飛行士が説明した例もあります。通信設備そのものはその後進歩していますが、ISSの回線は科学実験や運用にも使う共有資源である点を忘れない方がよいでしょう。
宇宙空間に出てもスマホは使える?
ISS船内でスマホを使えることと、宇宙服の外側へ市販スマホを持ち出して使えることはまったく別です。ISSの船内は人間が生活できる温度と気圧に維持されていますが、船外は真空に近く、強い温度変化や放射線にもさらされます。
市販スマートフォンは通常、このような環境で使用することを前提に作られていません。船外活動では宇宙服に組み込まれた通信機器やカメラなど、目的に合わせて認証された設備が使用されます。
したがって、「ISSでスマホが使えるなら、宇宙空間へ出てもそのまま撮影できる」と考えるのは適切ではありません。
将来は宇宙でも普通にスマホ通信できるようになる?
可能性はあります。低軌道衛星を利用したスマートフォン向け通信サービスや、宇宙空間でWi-Fiや携帯通信技術を活用する研究は進んでいます。NASAも将来の宇宙活動に向けて、宇宙空間でのWi-Fiや衛星通信技術の研究を進めています。
月面などに通信設備が整備されれば、将来的には地上でスマホを使う感覚に近い通信環境が作られる可能性もあります。ただし、2026年現在のISSで「日本から持って行ったスマホを取り出せば、そのまま4G・5Gにつながる」という段階ではありません。
現在は「スマホを宇宙へ持って行ける時代」にはなりつつありますが、「地上の携帯電話サービスを宇宙でもそのまま使える時代」になったわけではありません。この2つを分けて考えるのがポイントです。
宇宙ステーションでスマホは使えるが、通信方法は地上とは違う
国際宇宙ステーションでスマホは使えるのかという疑問については、2026年現在、NASAのCrew-12で最新スマートフォンの使用が確認されているため、「スマホは使えない」と一律に答えるのは適切ではありません。
ただし、宇宙へスマホを持って行ったからといって、地上で契約している4G・5Gの携帯電話回線につながるわけではありません。ISSは地上約400kmを秒速約7.7kmで飛行しており、通常の携帯基地局網を利用する環境ではないためです。
ISSには無線LANや地球との専用通信ネットワークがあり、宇宙飛行士はインターネット、メール、IP電話、ビデオ通信などを利用できます。スマートフォンについても、写真や動画の撮影、メッセージの記録、研究や作業支援など、携帯電話以外の機能が宇宙で活用されています。
結論として、宇宙ステーションではスマホを使えるものの、「地上と同じ携帯電話」としてではなく、宇宙用の通信環境や運用ルールの中で使用する端末と考えるのが正確です。


